最近、「パーパス」という言葉を耳にする機会が増えてきたのではないでしょうか?パーパスは、企業が社会に対しての存在価値やつながりについて明文化したものです。つまり、企業や組織が何のために存在するのか、従業員は何のために働いているのかを表していると言えます。
そして、このパーパスは今後ますます重要性を増し、経営者だけでなく、企業の全従業員が理解すべき考えとなります。そのため、企業全体にパーパスが浸透していない状況は即刻改善すべきであり、企業全体にパーパスの考えが浸透することは持続的な企業の成長には必要不可欠です。
しかし、パーパスが浸透していない原因を客観的に判断することは難しく、独力で解決するのは非常に労力がかかります。そのため、本記事ではパーパスが浸透していない原因と、パーパスを浸透させる方法について説明します。
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目次
パーパスとは
パーパスは、日本語で「存在意義」と訳されます。言い換えると、企業や組織が何のために存在するのか、従業員は何のために働いているのかという、最も本質的な目的や指針を表したものと考えることができます。パーパスは社会との繋がりを強く意識したもので、企業の根幹の考えになるものです。そのため、一度制定したら大きく変化してはいけないとされています。
パーパスと良く似た意味を持つ言葉の1つに経営理念があります。パーパスは広義の意味での経営理念となり、パーパスと経営理念の考え方は非常に近いものがあります。その企業が経営理念の中で、社会とのつながりや長年培ってきた根幹となるような考え方を強調したい場合にパーパスを掲げることが一般的です。
また、パーパスと近い関係性のあるクレド、ミッション・ステートメントといった言葉も広義の意味での経営理念に当たります。そのため、経営理念を掲げる際には、その企業の文化や考え方によって適切なものを選びましょう。
パーパスが浸透する重要性
では次に、パーパスが浸透する重要性について紹介していきます。
企業と従業員の方向性を定めやすくなる
パーパスが浸透することの重要性の1つ目は「企業と従業員の方向性を定めやすくなる」ことです。パーパスが浸透することによって、企業と従業員の方向性が定まり、従業員が意思決定を迅速に行え、誤った判断を行う可能性を抑制できます。
現代のビジネス環境は、先行きが不透明で将来の予測が困難な時代である「VUCA(ブーカ)時代」と呼ばれています。今後も時代は更に混迷を強くしていくと考えられ、事業を行う上で検討すべき経営課題が増えていくでしょう。そして、これらの経営課題にはどこにも正解がなく、意思決定が非常に困難になってしまうことが考えられます。
また、現代の企業はグローバル市場への参入による従業員の国籍の多様化や通年採用・中途採用の増加などの背景があり、多様性が増加しています。1つの企業内で多様な価値観が存在し、従業員の持つ価値観が定まっていないのが当たり前となりつつあります。そのため、企業が持続的に成長を続けていくためには、企業は従業員のバラバラな価値観からビジネスの方向性を1方向に定めなくてはいけません。
これらの「VUCA時代」と「多様な価値観」に企業が対応するためには、パーパスが浸透することが効果的です。パーパスが浸透することで、企業・組織の使命や目指すべき未来が明確化され、企業と従業員の方向性が定まります。企業の方向性が定まれば、従業員が行う意思決定の判断軸が決まるため、「VUCA時代」のような状況にも対応できます。
CSR(企業の社会的責任)を果たせる
パーパスが浸透する重要性の2つ目は「CSR(企業の社会的責任)を果たせる」ことです。現代社会の企業は利益だけを追求すればいいわけではありません。社会課題の解決を企業戦略に組み込み、利益を出しながら、CSR(企業の社会的責任)も果たさなくてはいけません。
そのため、利益だけを追求していく企業は持続的な成長を続けていくことが難しくなっていきます。この時代の背景とパーパスは非常に相性が良いです。パーパスは「社会的つながり」や「社会的意義」を重要視する考え方であり、社会的意義を重要視したパーパスが浸透することはCSRを果たすことに繋がります。
また、パーパスが浸透することによって、その企業が社会的意義を果たしている企業であると証明することに繋がります。パーパスが浸透していれば、企業が現代の社会課題に注力していることが分かります。現代の社会課題解決に尽力しているということが、従業員だけではなく周りの人や他の企業に伝われば、信頼と共感を得ることができます。その結果、その企業はパーパスを方向性としたブランドイメージを獲得することができます。このブランドイメージにより、企業イメージが向上し、売上・業績アップにつながることも考えられます。
優秀な人材の獲得につながる
パーパスが浸透する重要性の3つ目は「優秀な人材の獲得につながる」ことです。パーパスに共感した人材が集まりやすくなり、自社にとって優秀な人材の獲得につながります。
自社にとって優秀な人材を獲得することは企業が持続的に成長していく上で必要不可欠な要素です。自社にとって優秀な人材とは、その企業の経営理念やパーパスに共感し、企業の未来に貢献してくれる人材のことを言います。
パーパスが浸透することは、自社にとって優秀な人材を獲得する上で非常に効果的に働きます。特に今後の企業の中心となっていく20代のミレニアル世代を獲得する際に最も効果的です。
ミレニアル世代とは、2000年代に成人あるいは社会人になる世代の事です。ミレニアル世代の特徴として、共感を大切にすることが挙げられます。特にミレニアル世代は企業が環境や社会に配慮したビジネスをおこなっているかを重視しています。
そのため、このミレニアル世代を獲得する上では、企業の社会的存在価値であるパーパスが浸透していることが非常に重要になっていきます。
今後は、企業もパーパスを明確にしないと人材獲得が難しくなっていくことも考えられます。
したがって、企業・組織全体がパーパスを方向性として採用活動を行っていくことが大切です。また、パーパスに共感して採用された人材は、入社後のミスマッチを感じにくく、早期離職の防止にもつながります。
パーパスが浸透しない危険性!パーパスウォッシュとは
しかし現状として、パーパスを含めた経営理念は日本ではあまり浸透していないのが事実です。
こちらの円グラフはHR総合調査研究所による「企業理念浸透に関するアンケート調査」結果報告により作成したもので、企業の中でどの程度理念が浸透しているのかを表したものです。
出典)HR総合調査研究所(2013)『企業理念浸透に関するアンケート調査』
調査によると、「理念が浸透している」と答えた企業は全体の6%、「やや浸透している」と答えた企業は36%であり、合わせても40%強です。そのため、過半数以上の企業で経営理念が十分に浸透していないという現状があると考えることができます。
したがって、この結果から経営理念は自然には浸透しないということが言えます。経営理念が存在していても浸透させるための工夫をしていなくては、理念は簡単に形骸化してしまいます。
そしてこのようにパーパスが浸透していない状況のことを「パーパスウォッシュ」と言います。
パーパスウォッシュとはパーパスを掲げながらも実際の企業活動が伴っていない状態の事です。このパーパスウォッシュの状況が継続してしまう状況は非常に問題があります。なぜならば、パーパスを掲げているのにも関わらず、実際に行動をしていない状況は、ステークホルダーからの信頼を失いやすくなってしまうからです。
企業が企業活動を行う上で、ステークホルダーからの信頼を失う事態は絶対に避けなくてはなりません。そのため、パーパスが浸透していない状況は即座に改善すべきです。
パーパスウォッシュになってしまう要因
ではなぜパーパスウォッシュのような、パーパスが浸透していない状況に陥ってしまうのでしょうか?
これには大きく分けて、2つの理由があります。
従業員がパーパスに共感できていない
パーパスウォッシュになってしまう要因の1つ目は「従業員がパーパスに共感できていない」ことです。パーパスは従業員が共感していることが非常に大切で、従業員全員がパーパスに対して腹落ちしている状況が好ましいです。なぜならば、従業員は共感した行動しか、積極的に行動してくれないからです。
また、従業員がパーパスに共感できていないと、そのパーパスを自身の判断軸に組み込めなくなってしまいます。日頃の行動の中で、パーパスを意識できていないと、パーパスが浸透することはありません。
そのため、パーパスを浸透させるためには、従業員にそれぞれ「なぜこのパーパスがあるのか」や「自分の業務の中でどのようにしたら、パーパスが生きるのか」ということを考え、パーパスに共感し、自分事にしてもらうことが大切です。
パーパスが自分事になれば、日々の行動の中でパーパスをベースとした行動が可能になります。このような活動を続けていくとパーパスの浸透につながるので、パーパスに共感できることは非常に大切です。
パーパスを浸透させる仕組みが出来ていない
パーパスウォッシュになってしまう要因の2つ目は「パーパスを浸透させる仕組みが出来ていない」ことです。パーパスに共感できたとしても、企業の中でパーパスを浸透させる仕組みができていなければ、パーパスの浸透は進みません。
前述したようにパーパスは自然に浸透するものではありません。そのため、企業の中でパーパスが浸透できる仕組みをしっかりと用意しましょう。この仕組みづくりとしては業務の中でパーパスを落とし込む施策や1on1コミュニケーションを積極的に行うことなどが例として挙げられます。
また、仕組みづくりの中でも特に重要なことは、人事評価の中にそのミッションや価値観(会社の行動指針)の体現度を加味することです。すなわち、パーパスに沿った行動をした者が評価され、逆にいくら売上を伸ばしたからと言って、パーパスに反した行動をとってしまったら評価されない仕組みを組織の中で根付かせるということです。この仕組みが無いと、従業員はパーパスを体現する意味を感じ取れず、浸透が進みません。パーパスが浸透することは企業の持続的な成長にとって非常に重要です。目先の利益を取ることよりも長期的な成長に目を向けるようにしましょう。
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事例から学ぶパーパスウォッシュを防ぎ、パーパスを浸透させる方法と事例
パーパスを自分事にさせる
パーパスを浸透させる方法の1つ目は「パーパスを自分事にさせる」ことです。パーパスが浸透する上で、従業員がパーパスを自分事にできるかどうかは非常に大切です。
前述したようにパーパスを浸透させるためには、パーパスを自分事にし、日々の行動の中でパーパスをベースとした行動を可能にすることが重要です。そのため、経営理念を業務レベルに落とし込めるレベルにまで自分事にすることが大切です。
パーパスを自分事にした事例の例として、「SOMPOグループ」の取り組みの例を紹介します。
SOMPOグループでは、グループ全体のパーパスとは別に従業員一人ひとりに対し、自分の人生或いは働く意義である「MYパーパス」に向き合うことを奨励しています。
そして、SOMPOグループの従業員一人ひとりはMYパーパスを持ち、「SOMPOのパーパスとMYパーパスのどの部分が共鳴するのか」といったことについて深く考え、向き合います。その結果、SOMPOグループでは、SOMPOグループのパーパスとMYパーパスを重ね合わせた働き方を従業員一人ひとりが実践することできます。
この取り組みのおかげで、パーパスを自分事として捉えることができ、内的な動機に基づいて日々チャレンジしながらエンゲージメントを高く保ち働くことが期待できます。そして、最終的にはパーパスが従業員全員に自然と浸透することができます。
パーパス浸透に企業一丸で取り組む
パーパスを浸透させる方法の2つ目は「パーパス浸透に企業一丸で取り組む」ことです。パーパスが浸透する上で、全社的にパーパスの浸透ができる仕組みづくりに取り組むことが非常に重要です。
前述したように、パーパスが絵に描いた餅の状態になることを避けるためには、パーパス浸透のために、企業の中でパーパスが浸透できる仕組みをしっかりと構築しましょう。事例から学べる具体的な例をいくつか述べます。
- 1on1コミュニケーションの際に、パーパスを意識した発言をする。
- パーパスに応じた行動を人事評価の項目に追加する。
- 経営層がPurposeへの思いを講演する
また、パーパス浸透に企業一丸で取り組んだ事例として、「味の素グループ」の取り組みの例を紹介します。
味の素グループでは、パーパスに関しての個人発表会や社内SNSでパーパスのベストプラクティスを紹介したりと、全社的にパーパス浸透に向けて取り組んでいます。
個人発表会
組織のトップがいる前で、新人からベテランまで全員がプレゼンテーションを行うものです。自分がやっていることを他の人に聞いてもらうと同時に、他の人が何をやっているのか、組織全体としてどこに向かっているのかを理解できるという点が非常にパーパス浸透に効果的です。
ASV(Ajinomoto Group Shared Value)アワード
1年に1回の頻度で、社外有識者や社外取締役の皆さんが審査員を務める「ASVアワード」という社内イベントで表彰する制度があります。
参考)味の素株式会社
研修やクラウドサービスを用いる
パーパスを浸透させる方法の3つ目は「研修やクラウドサービスを用いる」ことです。パーパスが浸透していない原因を客観的に判断することは難しく、独力で解決するのは非常に労力がかかります。そのため、パーパスを浸透させるために、研修やクラウドサービスといった他のサービスを頼ることも1つの手段です。
研修やクラウドサービスといった他のサービスを頼る方法は、今までパーパスを意識したことが無い企業や今後ミッション経営に切り替えていこうとする企業に適した方法です。
パーパス浸透のご相談は株式会社O:にお任せください!
株式会社O:では、パーパスを浸透させるために研修・コンサルティングやクラウドサービスを用いたサービスを提供させていただいております。
弊社では、研修・コンサルティングの内容は会社の課題により異なり、個別最適化した内容を提供させていただきます。そのため、コンサルティングや研修の初めに、経営理念を浸透させる上での経営者がリアルに抱く悩みや障害をヒアリングさせていただきます。そして、経営理念を浸透させるために解決すべき課題や必要な要素を抽出します。その後、その企業だけのブランド・商材・企業文化・組織に個別最適化した解決案を提示させていただき、経営理念が浸透するまで併走させていただいております。主に以下のような研修・コンサルティングをご用意しております
- パーパス浸透のためのコンサルティング
- 経営理念研修
- マネジメント研修
- 評価者研修
- 目標管理研修
また、弊社が提供するコンサルティング・研修は経営理念が浸透するまでご支援させていただくことも特徴の1つです。一般的に、経営理念を浸透させるためには長い期間が必要です。そのため、弊社が提供する研修は期間が半年以上と長く、経営理念が浸透するまで併走させていただいており、研修後も実践・定着しやすいです
また、弊社では併走するだけではなく、それぞれの企業が自走しやすい環境づくりもご支援させていただくため、クラウドサービスである「Co:TEAM(コチーム)」を提供しています。
このコチームは1on1やフィードバック面談、目標管理、人事評価を繋ぐ、「個人の目標達成力を上げる」人材育成サービスです。それぞれの従業員が経営理念を浸透させるために重要な1on1コミュニケーションを効果的・効率的に行うことができます。その結果として、様々な企業・団体で経営理念の浸透成功をサポートさせていただきました。
また、特に弊社では、パーパスの浸透に力を入れております。過去に弊社がパーパスの浸透をお手伝いさせていただいた企業の例を知りたい方は、下記のリンクから過去記事をぜひご覧ください。
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まとめ
本記事では、パーパスが浸透していない原因やパーパスウォッシュを防いで、パーパスを浸透させる方法について説明しました。
パーパスが浸透しない主な原因は2つあります。
- 従業員がパーパスに共感できていない
- パーパスを浸透させる仕組みが出来ていない
そして、このパーパスウォッシュを防ぐためには、次の3つの施策を行いましょう。
- パーパスを自分事にさせる
- パーパス浸透に企業一丸で取り組む
- 研修やクラウドサービスを用いる
少しでもパーパスが浸透することのお手伝いになれば幸いです。ここまでお読みいただきありがとうございました!
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