組織風土改革を成功させる3つのポイントとは?職場改善のための成功・失敗事例・メリット・デメリット
目次
組織風土とは
組織風土改革という言葉は、企業や人にとって様々な定義が存在する曖昧な言葉です。時には同じ組織内であっても部署ごとに定義や考え方が違うこともあります。
そのため組織風土改革について理解するためには、まず「組織風土」について知る必要があります。
組織風土とは、ある組織の中で共通して存在する独自の価値観やルールのことを指します。
例えば
- 上司の言うことはたとえ間違っていても意見を言ってはならない雰囲気
- 社員同士の距離が近く、お互いをあだ名で呼び合うルール
- 先輩後輩関係なく、全員がお互い敬語で話すというルール
といった価値観やルールの事です。
これらの組織風土はその企業が経た歴史や経営者層、そして社員1人1人によって形作られたものです。
組織風土の3つの構成要素
組織風土は決まった1つの形はありません。しかし組織風土を分解すると、3つの要素に分けられます。
3つの要素の内、何が最も大事かといった順位はなく、すべての要素がお互いに整合性を持っていることが大切です。それぞれを具体例と共に見ていきましょう。
ハード要素
ハード要素とは、戦略や組織構造、制度といった目に見える要素のことを指します。
ハード要素は経営者層が主体となって積極的に関与することで大きな変化を生み出すことが可能です。また意思やプランがあれば比較的簡単に変化を起こせます。
具体的な例としては
- 企業理念
- 組織構造
- 人員配置
- 人事評価制度
- 就業規則
といったものがあります
ここで気を付けなければいけない例として、組織にとって最も良い人員配置を実施したとしても、配置された社員自身がやりたいと考える業務と実際に行う業務との間にギャップがあるケースです。
これは人員配置というハード要素ばかり優先させ、従業員のモチベーションといったソフト要素をおろそかにした結果、整合性を失っている状態です。
ソフト要素
ソフト要素とは、価値観や人材、経営スタイル、組織能力といった明文化されていない目に見えない要素のことを指します。
ソフト要素は言語化や可視化が難しく、変化させることが難しいといった特徴があります。組織風土改革するためにソフト要素を変化させようとしても、成果が出るまで時間がかかり、実感が伴いづらいといった特徴もあります。
具体的な例としては、
- モチベーション
- 従業員エンゲージメント
- コミュニケーション
- 信頼関係
- 責任の所在
といったものがあります。
ここで気を付けなければいけない例として、従業員の仕事に対するモチベーションを上げようと、人事制度に実力主義を導入したところ、各従業員が成果ばかりを求めて従業員同士の仲が悪くなってしまうケースがあります。
これはモチベーションというソフト要素ばかり優先させ、人事制度というハード面をおろそかにした結果、整合性を失っている状態です。
メンタル要素
メンタル要素とは、ソフト要素の中でも従業員の心理状態に関する要素を指します。
メンタル要素は、各従業員の感情が関わってくるため特にコントロールや変化させることが難しく、多くの時間と労力を必要とします。
具体的な例としては
- 発言や行動の場合に上司の顔色をうかがう必要があるかどうか
- 失敗をした時に助けてもらえるかどうか
- 前例のないような新たな挑戦が可能かどうか
といったものがあります
良い組織風土の特徴
組織風土改革するにあたって、目指すべき「良い組織風土」とはどのようなものでしょうか?
企業と従業員とのビジョンが一致している
ハード要素面での良い組織風土の特徴として、企業と従業員のビジョンが一致しているということが挙げられます。
ビジョンが一致していれば、従業員は企業の目指すべき方向性に合った行動をとってくれます。これにより、企業としての一体感が生まれ、世間での企業評価向上に繋がったり、従業員の非道徳的な行動の抑制に繋がります。
また企業と従業員のビジョンが同じであれば、従業員の「自分のやりたいこと」と「業務」の溝がなくなり、モチベーションの向上に繋がります。
従業員同士のコミュニケーションが活発
ソフト要素面での良い組織風土の特徴として、従業員同士のコミュニケーションが活発ということが挙げられます。
また垂直的にも水平的にもコミュニケーションが活発な時、「風通しの良い職場」と言い換えることもできます。
風通しの良い職場であれば、業務の連携がスムーズに行えたり、会社の雰囲気も良くなったりするので、生産性や働きやすさの向上に繋がります。
また風通しの良い職場ということは部下や上司との距離も近いため、そのような環境ではイノベーションが起きる可能性も高まります。
従業員の会社に対する満足度が高い
メンタル要素面での良い組織風土の特徴として、従業員の会社に対する満足度が高いということが挙げられます。
従業員の会社への満足度に対する指標の一つとして、従業員エンゲージメントがあります。高い従業員エンゲージメントは離職率の低下や生産性の向上につながります。
悪い組織風土の特徴
良い組織風土がある一方で、悪い組織風土とはどのようなものでしょうか?悪い組織風土を生まないために、その特徴を確認しましょう。
コミュニケーションが少ない
良い組織風土の特徴として、コミュニケーションが活発と述べましたが、悪い組織風土の特徴は、コミュニケーションが少ないことが挙げられます。
理想のコミュニケーション量は人によって異なります。しかし企業の中で仕事をする場合、少なからずコミュニケーションを取る必要性があります。
普段からコミュニケーションが少ないと、コミュニケーションが必要な時にスムーズに行えなかったり、コミュニケーションを取りたい人の迫害にもつながります。
またコミュニケーションが少ないことは、同僚への無関心に繋がります。このことはチームワークやお互いの配慮の低下に繋がり、生産性や従業員エンゲージメントの低下を引き起こします。
そしてこのような職場は雰囲気が暗く、働きづらい職場であるため、離職率が高くなります。
離職率は社員のモチベーションや従業員エンゲージメントの低さも表します。これらが低いということは、従業員の生産性の低さを表し、ひいては企業としての生産性の低さにもつながります。
組織風土によるもののみならず、離職率を上げないために離職防止の取り組みを行うことは重要です。
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従業員の成長意識が低い
悪い組織風土の特徴として、従業員の成長意欲が低いことも挙げられます。この特徴は経営が安定している企業に現れる傾向があります。
成長意欲が低い従業員が増えると、同調圧力が生まれてしまいます。このことは成長意欲が高い従業員の障害となり、優秀な人材の流出や企業としての成長の阻害となります。
また成長意欲が低いことは、競合他社への関心の低さにもつながります。変化の激しい現代において、競合他社への関心の低さは市場での失敗に繋がってしまいます。
3つの組織風土改革が必要とされている背景
現代において組織風土改革が注目されている背景には、どのような理由があるのでしょうか?
先の読めない時代への変化(VUCA時代)
現代そして今後は「VUCA時代」であるといわれています。
VUCAとは
- Volatility(変動)
- Uncertainty(不確実)
- Complexity(複雑)
- Ambiguity(曖昧)
の頭文字をとったものです。
かつてのビジネス環境は先を見通すことが比較的簡単でした。
そのため経営者層は指示を出し、従業員は経営層に言われたことを言われたとおりに働くことが求められました。そして先を見通せたため確実性もあり、そのような働き方で企業も結果を出せました。
しかし現代のビジネス環境では、だんだんと先を見通すことが困難になってきていて、確実に成功する方法が無くなりました。
そのため、環境の早い変化に合わせて企業自体も変化する必要性に迫られています。企業が環境変化に合わせ柔軟に対応するためには、各従業員の個人の多様性や能力を活かすことが求められています。
また、変化の早い現代においては、積極的に会社の未来を背負う人材の育成を進めていかなければなりません。
労働環境の変化
デジタル技術やITの進歩、またコロナウイルスの影響により、労働環境が大きく変化しています。
特にコロナウイルスの影響でリモートワークの大きな進歩が見られました。また終身雇用の崩壊や少子高齢化による人手不足、働き方改革といった要素によって、人材の流動性が高くなったという変化もあります。
働くことへの価値観の変化
かつては仕事が第一、家庭は第二といった人が多く存在し、私生活に対する意識というものがとても低い状況でした。また仕事内容よりも、組織の中で出世することや成功に重きを置く人も多い状況でした。
しかし時代を経るにつれ仕事に対する価値観が大きく変化してきました。
現代はワークライフバランスへの関心の高まりにより、仕事だけでなく私生活も充実させたいという考え方が広まり、残業や飲み会には参加したくないといった人も増えてきています。
また出世や成功することよりも、仕事自体への楽しみややりがいを求める人も増加しています。
組織風土改革3つのメリット
良い組織風土の特徴の際にも組織風土改革によるメリットに言及しましたが、改めてわかりやすく3つの大きなメリットをまとめておきましょう。
生産性の向上
組織風土改革の大きなメリットの1つ目は、生産性の向上です。
組織風土改革により、従業員のモチベーションを高めたり、コミュニケーションを活発にしたりすることに成功すれば、企業としての生産性向上につながります。
業務自体に対する高いモチベーションを持った従業員は1人当たりの生産性が高くなり、企業の生産性も高まります。
また成長意欲が高い社員が増えれば、互いに高めあい、優秀な人材も増えるため、生産性向上につながります。このことは人材育成の成功にも繋がります。
活発なコミュニケーションはチームワークの強化や生産性のない無駄な作業の省略にもつながり、こちらも生産性の向上に繋がります。
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離職率の低下
組織風土改革の大きなメリットの2つ目は、離職率の低下です。
組織風土改革により、従業員の満足度やモチベーションが向上すれば、離職率の低下に繋がります。
また離職率のなかで、特に重要な若手の離職率を低下させるために組織風土改革は有効でしょう。
働き手不足の現代日本において人材の定着、優秀な人材の流出防止といったことは企業の長期的成長に欠かせないものとなっています。
優秀な人材が増えれば生産性の向上にも繋がり、かつ優秀な従業員が多ければ従業員同士での切磋琢磨や新たな優秀な人材の呼び込みにもつながります。
若手の離職率が高い企業は、古い慣習や価値観の残る企業である場合が多くあります。このような悪い組織風土を改革によって改善できれば、若手の離職率低下に繋がり、ひいては新しい人材確保や人材育成といったことにも繋がります。
採用の競合優位性の向上
組織風土改革の大きなメリットの3つ目は、採用の競合優位性の向上です。
組織風土改革により、コミュニケーションが多く明るい環境が生まれます。それを求職者にアピールすることにより、人材が集まりやすくなって採用の競合優位性が高まります。
また上記のように低い離職率という結果が生まれれば、職場環境の良さを表す具体的な数値として人々の関心を集め、こちらも採用の競合優位性を高めることにつながります。”
組織風土改革成功のための3つのポイントやコツ
ここでは組織風土改革するにあたって意識すべき3つのポイントを見ていきましょう。
具体的な目標を掲げる
組織風土改革はリサーチから始まり、結果が出てくるまでに長い時間がかかります。
時間がかかってしまうために実施中に目的が曖昧になってきて、中途半端な結果に陥ることや、取り組みに対する疑問の声が上がることもあります。
これらを防ぐために、具体的な目標を掲げるということが大切です。またその目標も従業員全員が覚えやすく、シンプルな目指すべき姿を提示することが良いでしょう。
具体的な目標を掲れば、変化したという実感が伴いやすいため疑問の声が起こりづらくなり、中途半端な結果になることも防げます。
また変化を意識するためにも、段階的に目標を更新していくことも大切です。
十分なリサーチによる現状把握
組織風土改革において、十分なリサーチは必要不可欠です。リサーチが不十分だと組織風土改革はうまくいきません。
上記の通り、組織風土は3つの要素から成り立っています。このうち、ソフト要素とメンタル要素が多くの割合を占め、重視されるべきとされています。
この2要素の現状は簡単に抽出できないため、把握するために十分なリサーチが重要です。リサーチして現状を把握することで、問題点や理想の形態を可視化できます。
リサーチの手段として、アンケートやディスカッションが有効です。
ディスカッションする場合はブレインストーミングの方法を取ると良いでしょう。その際には批判してはならず、自由に意見をさらけ出すということがポイントです。
そしてソフト要素やメンタル要素は抽出して把握するために多くの時間を必要とします。また組織風土というものは長い時間をかけて形作られたものなので、その組織風土を改革するということも多くの時間を要します。
そのため全体を通して長い時間と手間がかかるということを理解してから組織風土改革しなければなりません。
経営者層の説明努力
組織風土は従業員1人1人によって形作られるものです。そのため組織風土改革を成功させるためには従業員の納得を得る必要があります。
しかし企業とは異なる価値観を持つ1人1人の人間の集まりです。そして人という生き物は本能的に変化を嫌う生き物であるため、ただ制度を整えて改革しようとしてもうまくいきません。
組織風土改革成功のため従業員の理解と協力を得るには、経営者層が繰り返し改革の目的や意義を訴えなければなりません。
具体的にはセミナーや説明会を定期的に開いて、段階的に理想の姿を全従業員に浸透させる必要があります。
ここで注意しなければならないのは、上層部からの押し付けになってしまわないようにすることです。
ハード要素は意思やプランがあれば、経営者が主体となって変化を比較的簡単に起こせるという面がある一方、従業員は押し付けだと感じやすい面もあります。
従業員が押し付けられたと感じ不満が起これば、組織風土改革がうまくいかないだけでなく、改革実施前よりも悪い状態に陥ることも考えられます。
従業員全体に納得感を持ってもらうことは簡単なことではありません。しかし定期的なセミナーや説明会といった経営者層の不断の努力により、理解と協力を得られれば、組織風土改革はうまくいくでしょう。
2つの組織風土改革「成功例」
参考にするために、実際に組織風土改革に成功した企業の例を見ていきましょう。
キリンビール株式会社
キリンビール株式会社は、「一番搾り」や「氷結」といった人気アルコール商品を販売する、キリンホールディングスの中の主要企業です。
かつて「ビールといえばキリン」といわれたほど、キリンビール株式会社はビール市場のトップに君臨していました。しかし、時代の変化に対応できず2001年にはトップの座から陥落してしまいます。
この出来事を受けて、当時の布施社長は組織風土改革の一環として対話集会をスタートさせました。
この対話集会は経営者層や管理職だけでなく、若手社員や労働組合までをも巻き込んだものでした。そしてこの対話集会の中で「お客様のことを一番に考える組織風土に」というメッセージを会社に浸透させました。
そしてこの取り組みにより社員の意識改革に成功し、企業としての成長に繋がりました。
結果として、年々ビール市場が縮小してきている状況の中でも収益を上げることに成功し、メイン商品の一つである「1番絞り」は2019年には過去最高売り上げを達成しました。”
日本航空株式会社(JAL)
日本航空株式会社(JAL)は、日本で最も長い航空会社としての歴史を持ち、現在も国内線と国際線両方でトップクラスの収益を誇る航空会社です。
日本航空株式会社(JAL)は2008年のリーマンショックにより、大きな打撃を受けました。
この打撃により、2010年には会社更生法の申請するまでに至りました。このとき2兆3000億円という、事業会社としては戦後最大の負債を抱えるまで状況は悪化していました。
その後日本航空株式会社(JAL)を再建するため、政府からの要請もあり京セラ創業者である稲盛和夫氏が会長に迎えられました。
稲盛氏はリーダー層の意識改革を中心とした組織風土改革を実施しました。
この改革を通してリーダーとしての心構えや、稲盛氏の経営哲学である「経営十二カ条」をリーダー層に浸透させました。その後意識改革したリーダー層が社員に対しての意識改革を促進させました。
その結果2012年には東京証券取引第一部への再上場を達成し、2019年にはグループ全体で1兆4,872億円の売上高を誇るまでに回復しました。
組織風土改革 「失敗例」
2000年に某大手自動車メーカーの大規模なリコール隠しが発覚しました。
このリコール隠しは刑事事件にまで発展し、法人として有罪判決を受け、同社への世間からの評価は下落の一途をたどりました。
その後同社は世間の信頼を取り戻し、事件の再発を防ごうと企業風土改革の一環として企業倫理委員会を設置しました。しかし2016年に今度は意図的なデータ改ざんがという以前と似た問題が発覚しました。
組織風土改革をしたのに、なぜ再び同じような問題が起きてしまったのでしょうか?
その理由として組織風土改革をしたにもかかわらず、悪い組織風土を改善しきれなかったことが挙げられます。
同社には
- 失敗などの不都合なことは上司に報告できない雰囲気
- どんな方法でもとにかく売り上げを上げなければいけない雰囲気
このような組織風土が組織風土改革以前からあり、改革後もこのような組織風土は変わることなく、根強く残っていたそうです。
対策をしたにもかかわらず、同じ過ちを繰り返してしまった理由。それは組織風土改革が徹底されず、中途半端になってしまった結果だといえます。
まとめ
ビジネス環境が大きく変化していくこれからの時代において、組織風土改革の必要性や関心が高まっています。
特に歴史の長い会社は現状に満足することなく、今一度組織風土を見直す必要があるでしょう。
しかし組織風土改革には明確な答えが無く、多くの時間や労力がかかってしまうという不安や、何から始めればよいかわからないといった思いもあると思います。
組織風土改革の第一歩としてまず、「1on1ミーティング」の時間を設けるという方法があります。1on1ミーティングとは週に1回、30分や隔週に1回、30分といった短いサイクルで定期的に1対1で話すことです。
1on1ミーティングはコミュニケーションを増やせ、また現状をリサーチすることもできます。そして簡単に始められるという良さがあります。
しかし一方で、予定の調整が大変だったり、有意義な時間にするためには労力がかかってしまったりするため、なかなか継続できないというケースが多くあります。
これらの問題を解決できるツールとして「Co:TEAM(コチーム)」というサービスがあります。
「Co:TEAM(コチーム)」はスケジュール管理やアジェンダ提案など、1on1ミーティング支援機能に加え、目標管理や称賛・フィードバックをそれらと有機的につなぐパフォーマンスマネジメントツールです。
Co:TEAM(コチーム)について詳しく知りたい方は、以下よりご覧ください。
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