次世代リーダー育成の進め方と候補者の見極め方

▼ この記事の内容

次世代リーダー育成は、候補者に研修を受けさせるだけでは不十分です。将来任せる役割を定義し、候補者の適性を見極め、現場経験と1on1で内省を回しながら成果指標で進捗を確認することが重要です。

弊社が支援した育成テーマの企業では、成長目標と支援範囲を明確にし、新人の独り立ち期間を6か月から3か月へ短縮した事例があります。次世代リーダー育成でも、研修だけでなく日常業務の中で成長目標と支援範囲を明確にすることが重要です。

営業マネージャーの現場では、成績上位者を候補にしたものの、会議運営や後輩支援を任せると期待通りに進まないことがあります。放置すると、候補者本人も周囲も役割期待を読みにいく状態になり、育成施策の成果を説明しにくくなります。

この記事では、次世代リーダー育成で判断が止まりやすい候補者の見極め、経験設計、1on1、成果指標を整理します。研修を実施する前後で、営業現場が何を任せ、何を振り返るべきかを判断できるようにします。

読み終えるころには、自部門の候補者に必要な経験と面談の進め方を、社内で説明できるはずです。

次世代リーダー候補との対話を、場当たりではなく育成の型にしたい方は資料を確認できます。

次世代リーダー育成の全体像

次世代リーダー育成は、将来任せる役割を先に決め、必要な経験と振り返りを計画的に積ませる取り組みです。研修は入口にすぎず、現場での判断経験と1on1の支援まで含めて設計します。

研修ではなく役割経験を設計する

次世代リーダー育成では、研修受講より先に候補者へ将来任せる役割経験を設計します。営業現場では、会議運営、案件判断、メンバー支援を段階的に小さく任せることから始めます。

研修だけで行動が変わらない理由は、知識を使う場面が業務内に用意されていないためです。候補者が判断し、失敗し、上司と振り返る流れがないと、学びは現場に残りません。

育成設計は、研修、配置、1on1、評価を分けて考えると整理しやすくなります。研修で共通言語を作り、配置で挑戦機会を渡し、1on1で内省し、評価で行動変化を確認します。

要素 役割 営業現場での例
研修 共通言語をそろえる リーダーの役割と期待行動を確認する
配置 判断経験を渡す 重点案件の進行や朝会運営を任せる
1on1 内省を支える 判断理由と次の改善点を言語化する
評価 成長を確認する 成果だけでなく支援行動も見る

70:20:10モデルは、学習機会を経験、関係、研修に分けて考える代表的な考え方です。固定比率として扱わず、自部門の役割要件に合わせて経験量を調整するのが実務的です。

参考:The 70:20:10 Model for Learning and Development|Training Industry

育成は選抜前から始まっている

次世代リーダー育成は、候補者を正式に選ぶ前から始まっています。日常業務で小さな役割を渡し、周囲への影響や内省力を観察する期間が必要です。成績上位者をすぐ候補者にするだけでは、マネジメント適性を見誤ります。自分の数字を作る力と、他者の成果を支援する力は、同じ営業力では測れません。

弊社が支援した育成テーマの企業では、新人の独り立ちまでの期間に短縮した事例があります。成長目標を設計し、先輩の支援範囲を明確にしたことが前提です。

選抜前の観察では、本人の意欲だけでなく、任された仕事をどう振り返るかを見ます。営業マネージャーは「今回の判断で、次に変える点はどこですか」と聞くと、内省の深さを確認できます。

営業現場では任せる範囲を決める

営業現場の次世代リーダー育成では、候補者に任せる範囲を先に決めます。案件、メンバー、会議、改善テーマのどこを任せるかで、育つ能力が変わります。

いきなりチーム全体を任せると、候補者も周囲も混乱します。最初は重点案件のレビュー同席や新人の商談準備支援など、失敗しても上司が回収できる範囲が適しています。

任せる範囲は、成果責任と支援責任を分けて設計します。営業成績だけを追わせる段階なのか、メンバーの行動改善まで支援させる段階なのかを明確にします。任せる範囲が曖昧なままでは、候補者は上司の期待を読みにいく働き方になります。範囲を決めると、次に確認すべきスキルと候補者要件が見えやすくなります。

関連する設計を整理する際は、1on1ミーティングの基本も確認すると、本記事の論点を実務に落とし込みやすくなります。

候補者と要件を見極める

次世代リーダー候補は、営業成績だけで決めると見誤ります。課題設定力、周囲への影響、再現性、顧客視点、内省力を分けて確認すると、育成対象と育成課題が明確になります。

成績上位者だけを選ばない

次世代リーダー候補は、個人の営業成績だけで選ばないことが重要です。自分の成果を出す力と、周囲の成果を支える力は別の能力として確認します。成績上位者を選べばよいと感じる方は多いです。しかし営業マネージャーの現場では、強い個人商談力がそのまま育成力や会議運営力に変わるとは限りません。

弊社が支援した育成テーマの企業でも、新人の独り立ち期間を6か月から3か月へ短縮できた背景には、候補者本人の成果だけでなく、先輩やメンターの支援範囲を明確にした運用がありました。個人の営業成績だけでは、周囲を育てる力を見落とします。

候補者選びでは、成果、周囲への影響、課題設定、再現性を並べて見ます。次の比較表で、営業成績だけでは見落としやすい観点を確認できます。

確認観点 見るべき行動 見落としやすいリスク
営業成績 目標達成の継続性を見る 個人技に依存している場合があります
周囲への影響 後輩の行動変化を支援しているかを見る 助言が一方通行になる場合があります
課題設定力 問題を分解し、優先順位を決めているかを見る 上司の指示待ちに戻る場合があります
再現性 成功理由を他者に説明できるかを見る 成果が本人だけの暗黙知に残ります

課題設定力と周囲への影響を見る

次世代リーダー候補には、課題を自分で設定し、周囲の行動変化を支援する力が必要です。営業会議で問題を分解し、次の打ち手まで示せるかを見ます。

営業チームでは、未達の原因を商談数不足だけで片づける場面があります。候補者が案件の質、提案前の情報量、メンバー別のつまずきまで分けて話せるかが判断材料になります。

周囲への影響は、声の大きさではなく、相手の行動が変わったかで確認します。新人の商談準備に同席した後、質問内容や事前準備が変わっていれば、支援行動として評価できます。

顧客視点と再現性を確認する

次世代リーダー候補の要件では、顧客視点と再現性を必ず確認します。売れた理由を顧客課題、提案内容、次回行動に分けて説明できる人ほど、他者にも教えやすくなります。

トップセールスが自分の成功理由を感覚で語るだけでは、チームの学習にはつながりません。商談後に、顧客が動いた理由と次に変える行動を言語化できるかを見ます。

候補者の見極めは、育成手順と切り離さずに進めます。要件が分かると、次にどの経験を任せ、どの場面で振り返るべきかを現場業務へ落とし込みやすくなります。

育成ステップを現場に落とす

次世代リーダー育成は、候補者選抜、経験付与、振り返り、権限委譲、成果測定を日常業務に組み込むことで進みます。営業現場では、商談、会議、後輩支援、案件判断を小さく任せながら成長を確認します。

最初に任せる経験を決める

次世代リーダー育成の最初の手順は、候補者に任せる経験を1つ決めることです。営業現場では、大型案件は同席から始め、会議運営や後輩支援など回収可能な範囲で挑戦を設計します。

経験を決める前に、候補者へ何を伸ばしたいのかを明確にします。課題設定力を伸ばすなら案件レビュー、周囲への影響を伸ばすなら新人支援のように、目的と場面を対応させます。

営業マネージャーは、次の順序で育成経験を業務へ入れると管理しやすくなります。通常業務の中で扱うため、追加研修だけに頼らず進捗を確認できます。

  1. 候補者に伸ばしてほしい能力を1つ決めます。
  2. 任せる業務を商談、会議、後輩支援、改善テーマから選びます。
  3. 上司が回収できる失敗範囲を先に決めます。
  4. 実施後に、判断理由と次の改善点を振り返ります。

振り返りで意思決定を言語化する

振り返りでは、候補者が何を見て判断したのかを言語化します。結果の良し悪しだけでなく、顧客情報、チーム状況、優先順位をどう扱ったかを確認します。

商談レビューでは、受注できたかどうかだけを見ると学習が浅くなります。候補者に「どの情報で次の一手を決めましたか」と聞くと、判断の前提が見えます。

本人の内省が弱い場合は、問いを広げすぎないことが有効です。最初は判断材料、迷った点、次に変える行動の3点に絞ると、1on1や案件レビューで継続しやすくなります。

1on1で内省と次の挑戦をつなぐ

1on1は、次世代リーダー候補の内省と次の挑戦をつなぐ場です。上司は経験を評価するだけでなく、候補者が次に任される範囲を自分の言葉で整理できるよう支援します。

忙しい営業マネージャーほど、育成面談を特別な予定にすると続きにくくなります。案件レビューの後や週次の短い1on1で、判断理由と次回行動を確認する形にすると運用しやすくなります。

面談では、候補者の失敗を詰めるよりも、次に試す行動へ変換します。「次の商談で、誰にどの情報を確認しますか」と聞くと、内省を行動に戻しやすくなります。

権限委譲は段階を分けて広げる

権限委譲は、一度に広げず段階を分けて進めます。顧客影響が大きい業務は上司の承認を残し、候補者が判断できる範囲から任せます。

営業現場では、候補者に任せる範囲を曖昧にすると、本人も周囲も判断に迷います。提案前レビュー、会議運営、後輩支援、案件優先順位のどこまで任せるかを分けます。

段階 任せる範囲 上司の関与
同席 商談や会議で観察します 判断理由を後で確認します
部分担当 資料準備や論点整理を任せます 実施前に方向性を確認します
主担当 案件レビューや後輩支援を任せます 結果と改善点を確認します
委譲 小さなチーム判断を任せます 例外時だけ介入します

経験を任せた後の振り返りを1on1で続けたい場合は、面談の進め方を資料で確認できます。

育成面談で期待をすり合わせる

育成面談では、組織が期待する役割と候補者本人のキャリア意向を早い段階ですり合わせます。期待だけを伝える面談では、不安や抵抗が見えず、任せた後の行動変化も追いにくくなります。

最初に聞く質問例を用意する

次世代リーダー候補との最初の面談では、期待役割を伝える前に本人の意向を確認します。営業現場では、挑戦したい役割、迷いやすい判断、不安の3点から聞くと対話が進みます。

質問は、候補者を試す言い方ではなく、本人の見えている景色を知るために使います。「将来どのような役割に挑戦したいですか」と聞くと、役職名ではなく関心領域を確認できます。

続けて「今の業務で判断に迷う場面はどこですか」「任される範囲が広がることに不安はありますか」と聞きます。候補者の意向と組織期待を記録しておくと、上司や人事への説明材料にもなります。

避ける質問例で圧を下げる

育成面談では、候補者に結論を迫る質問を避けます。管理職になりたいよね、という聞き方は、本人の本音より上司への迎合を引き出しやすくなります。

なぜもっと主体的に動けないのか、という質問も避けるのが安全です。営業マネージャーは、詰問ではなく「どの判断で止まりましたか」と聞くと、支援すべき課題を見つけやすくなります。

この役割を引き受けられるよね、という聞き方は、候補者の不安を隠します。期待を伝える場合も、任せる範囲と上司が支援する範囲を分けて話すと、次の面談につなげやすくなります。

候補者に圧をかけずに対話を続けるには、面談アジェンダを固定して記録する準備が必要です。

アジェンダで対話を継続する

育成面談は、毎回の雑談ではなくアジェンダで継続します。候補者の経験、判断理由、不安、次に任せる範囲を同じ順序で確認すると、成長の変化を追いやすくなります。

営業チームでは、案件レビューや週次1on1に育成アジェンダを差し込むと続きやすくなります。たとえば、商談後に判断理由を確認し、次回任せる範囲を1つだけ決めます。

アジェンダがあると、候補者のキャリア意向と組織期待のズレを早く見つけられます。面談記録は、次に成果指標を設計するときの根拠にもなります。


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成果指標で育成を説明する

次世代リーダー育成の成果は、受講満足では説明できません。任せられる業務範囲、意思決定の質、支援行動、後継候補readiness、チームKPIへの寄与で確認します。

受講満足ではなく行動変化を見る

育成成果は、研修後アンケートより行動変化で見ます。候補者がどの判断を担い、周囲へどんな支援行動を取ったかを記録します。

初期は定性指標も併用するのが現実的です。案件レビューで論点を絞れた回数、後輩への助言が次回行動に反映された場面などを残します。

Gallupの2025年版職場レポートを報じた記事では、2024年の従業員エンゲージメントは21%、管理職のエンゲージメントは27%とされています。管理職育成は、個人の研修満足ではなく、チームへ波及する行動で説明する必要があります。

参考:Managers aren’t feeling so hot right now. It’s costing them their sanity and the global economy billions.|Business Insider

readinessと委譲範囲を記録する

readinessは、候補者が次の役割を担える準備度を示す管理用の見立てです。評価ラベルとして固定せず、委譲範囲とセットで更新します。

readinessを説明するには、何を任せられるようになったかを具体化します。営業会議の議題設計、後輩支援、案件方針の仮説作成など、業務単位で残します。

記録項目 見る変化 使い方
委譲範囲 任せられる業務の広がり 次の経験を決める
意思決定の質 判断理由の明確さ 1on1で振り返る
支援行動 周囲への影響 候補者要件を見直す

この表は、人事評価のための点数表ではありません。営業マネージャーが、次にどこまで任せるかを説明する材料として使います。

チームKPIへの寄与を仮説化する

チームKPIへの寄与は、育成施策だけの成果として断定しないことが重要です。候補者の行動変化が、商談準備や後輩支援にどう影響したかを仮説化します。

たとえば、候補者が後輩の商談準備を週1回支援した場合、見る指標は受注額だけではありません。初回提案の質、レビュー回数、停滞案件の解消数も確認します。

短期KPIだけで判断すると、候補者が挑戦より失敗回避を選びやすくなります。育成成果は、行動変化、委譲範囲、チーム指標の順に説明し、失敗条件の確認へ進みます。

育成が失敗する条件を避ける

次世代リーダー育成は、研修だけ、成績上位者だけ、人事任せ、成果指標不在のまま進めると定着しません。失敗条件を先に決めると、現場で修正しやすくなります。

研修だけで終わらせない

研修だけで育成を終えると、候補者の行動変化が見えにくくなります。研修後に任せる経験と振り返りの場を決めておく必要があります。

NG例は、研修を受けた候補者に翌週から自走を期待する進め方です。修正例は、研修後に案件レビューの論点整理を任せ、1on1で判断理由を確認する進め方です。

人事主導の研修でも、現場責任者が経験付与を設計すれば定着しやすくなります。研修は入口として使い、日常業務のどこで行動を変えるかまで決めます。

人事任せにせず上司が関わる

次世代リーダー育成は、人事任せにすると現場の期待とずれやすくなります。上司が候補者の経験、面談、委譲範囲を見続ける必要があります。

営業マネージャーは忙しく、育成まで手が回らないと感じる方は多いです。だからこそ、面談のたびにゼロから考えるのではなく、経験、判断、次の挑戦を同じ型で確認します。

NG例は、人事が候補者リストだけを作り、現場上司が関与しない進め方です。修正例は、上司が月1回の育成面談で委譲範囲を更新し、次のFAQでは基本論点を短く整理します。

よくある質問

次世代リーダーとは何ですか

次世代リーダーとは、将来チームや事業の一部を任せる候補者です。現時点の役職ではなく、課題設定、周囲への影響、意思決定、内省力を育てる対象として見ます。具体的な進め方は組織の現状に応じて調整します。

次世代リーダーに必要なスキルは何ですか

必要なスキルは、課題設定力、周囲への影響力、顧客視点、再現性、内省力です。営業現場では、成果を出す力だけでなく、他者の行動変化を支援できるかも確認します。まずは現状の課題を整理することから始めます。

リーダー育成がうまくいかない理由は何ですか

リーダー育成がうまくいかない主な理由は、研修だけで終わり、現場経験や1on1の振り返りが設計されていないことです。上司が委譲範囲と成果指標を見続ける必要があります。

まとめ

次世代リーダー育成は、候補者を選んで研修に送り出すだけでは定着しません。将来任せる役割、候補者の要件、経験付与、1on1での振り返り、成果指標をつなげて設計する必要があります。

現状のまま進めると、成績上位者を選んだのに周囲を支援できない、面談で本人の不安を拾えない、育成成果を社内で説明できないという損失が残ります。営業マネージャーは、候補者が何を判断し、どこまで任せられるようになったかを日常業務の中で見続ける必要があります。

候補者を決めただけでは、育成は現場に定着しません。次世代リーダー育成を現場で続けるなら、まず1on1の進め方を整えることから始められます。

※具体的な数値は導入企業の許可を得た範囲で一部加工しています

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