S級HR#3/ルネサンス樋口氏・医学博士志村氏・O:谷本が「攻めのHR」について経営/医療/健康の観点から迫る!
株式会社O:が主催する、S級HR#3が6/26(水)19:00~新宿のイベントスペースにて開催されました。※こちらは2019年のイベントレポートとなり、「S級マネジメント」メディア運営元でインターンをしている糸井が寄稿しました。
株式会社ルネサンスで健康経営コンサルタント/健康経営推進部次長を務める樋口毅さんと、医学博士(睡眠学)の志村哲祥さんから、一歩踏み込んだ「攻めのHR」を実践するためのテクニックを、実際の事例や研究に基づきながらお話しいただいた本イベント。
「残業時間を抑制しても、うつや自殺リスクは減らない」など、睡眠や健康経営に関する固定概念を崩されるお話が満載でした!
残業時間制限をしても社員の自殺リスクは変わらない!?
初めに行われたのが医学博士(睡眠学)の志村哲祥さんの講演、「健康経営と睡眠」でした。
いきなり衝撃を受けたのが、「残業時間制限をしても社員の自殺リスクは変わらない」という事実でした。
なぜなら、自殺リスクを高める要因は残業時間の長さだけでなく「睡眠」に起因するからというのが志村さんの研究結果。
残業時間とうつの間には有意な関係がなく、むしろ睡眠時間が削られてしまうとうつになるリスクが高まるという研究結果が出ているそうです。
さらに、6時間未満睡眠の方は5.1倍自殺リスクが高まるとのこと。
(これを見てドキッとしたあなたは、ご注意を!)
また、睡眠の問題がある人は休退職リスクが高まるという結果も出ているそう。
つまり、企業としてメンタルリスク対策や休退職者数抑制を行うのであれば、残業制限だけでなく、睡眠にまで目が向けられていなければ不十分ということです。
近年の働き方改革の文脈で残業時間を抑制している企業も増えていますが、睡眠にまで目を向けて施策を打っている企業はまだ少ないかもしれませんね。
では、睡眠時間が長ければ良いのかというと、そうでもないということも判明している。
必要な睡眠時間は年齢によって大きく異なり、年齢を重ねるに従って必要な睡眠時間は短くなっていきます。
加えて、人にはそれぞれ異なるおよそ24時間周期の体内時計のタイプ(≒朝方なのか夜型なのか)があります。
そのため、必要な睡眠時間だけでなく、就床・起床時間、知的機能が高まる時間も個人差/年齢差があります。
しかし、一般的な企業では一人一人異なる体内時計までは考慮していないため、本来パフォーマンスが低くならざるを得ない時間に働いています。
人によってはまだ寝ていないといけない時間に無理に働いているケースも多々あるそうです。
働き方改革にともなって、単位時間あたりの生産性を上げることが重要となってきていますが、そのためにはひとそれぞれ異なる「体内時計」や「睡眠」にまで目を向けた施策を打つことが必要となってきます。
初耳の情報が盛りだくさんだった志村さんの講演。来場者の方からもたくさん質問が寄せられました。
中でも、みなさん気になりそうな質問をふたつご紹介します。
一つ目は、
「仮眠は取った方がよいのか?」
志村さんの回答はこちら。
「本来、十分な時間眠れていれば、日中眠くなりません。つまり、仮眠が出来るということは必要な睡眠時間が取れていないということになります。
仮眠を取るのであれば10分程度に留めてください。
ただし、減ったパフォーマンスが少し上がる程度であり、仮眠で睡眠不足は解消されません。」
日中眠気がある方は仮眠を取るのも良いですが、根本的な解決にはならないので、なんとか十分な睡眠時間を確保する必要がありますね!
二つ目は、
「睡眠の深さは重要ではないのか?」
志村さんの回答はこちら。
「寝ている最中に何度も起きてしまったり、その後眠れないのであれば問題があります。
しかし、結局その人にあった睡眠時間が取れているかが最も重要です。
例えて言うならば、ものすごく美味しい懐石料理でも、量が少なければ満足できないという事です。」
健康×働き方改革
続いて行われたのが、株式会社ルネサンス健康経営推進部次長の樋口毅さんによる講演、「『攻めの健康経営』健康経営×働き方改革」でした。
現在話題の「健康経営」
会場でこのキーワードを聞いたことがある人がいるか聞いたところ、会場いる方全員が手を上げました。
しかし、5年前に聞いた人はここまで知っている人はいなかったそうです。
この背景は政府内で、厚生労働省だけでなく経済産業省、スポーツ庁といった省庁が健康経営を推し進めたことにあるそうです。
これにより、社員の健康に目を向けていかに業績を上げるかという「攻めの健康経営」の文脈が現れ、ホワイト500を始め顕彰制度が多数整備されたことで「攻めの健康経営」を後押しする風が吹いています。 健康経営優良法人認定制度(METI/経済産業省) 健康経営優良法人認定制度のページです。
その結果、現在健康経営に取り組む企業が増加しています。
ところで、各企業が健康経営に熱心に取り組むのはなぜなのでしょうか。
それは、日本の人口減少に伴い、企業では労働力の確保が厳しくなってきていることにあります。
企業が存続するためには
①労働の量を確保する
②労働の質を確保する
この2つが必要であり、健康経営はこの2つと密接な関係があります。
①労働の量に関しては、健康経営の取り組みをしっかりと行っていれば企業の魅力付けによって人材も集まりやすくなる一方、電通事件のように健康に投資しないとリスクになり得ます。
②労働の質に関しては、会場でのこんなやりとりをご紹介します。
(樋口さん)
「月~金で一番調子が悪いのは何曜日でしょうか?」
この問いに、会場では月曜日に回答が集中しました。
(樋口さん)
「では、月曜日に重要な仕事をしないように出来るでしょうか?なかなかそうはなりませんよね。
なので、エンゲージメントやパフォーマンスが下がらないよう、経営の視点から社員の健康に投資する健康経営が必要になります。」
まとめると、各企業が健康経営に取り組むのは以下のような効果があるからということになります。
・株価への影響
・労働市場からの評価
・社員への影響
・生産性への影響
そして、健康経営を実践するには、働き方改革と健康経営を両輪で回し、一人一人にあった働き方をいかに用意するかがポイントとなるそうです。
健康経営を始める第一歩は?
講演の後には会場からの質問を元に、登壇者のお二人と株式会社O: 代表取締役CEO 谷本を交えたパネルディスカッションが行われました。
寄せられた質問からいくつかピックアップしてご紹介します。
Q:社員に健康の意識を根付かせるために必要なことはなんでしょうか。
インセンティブで釣るというのは得策ではないと思うのですが。
(樋口さん)
インセンティブで釣るのも良いですが、いつまで管理するかが課題です。
例えば、健康診断の再検査受診率が低いという問題があったとして、どこまでリマインドをするのか。生活の中の、健康の意味を認識してもらい、自分事として捉えてもらうことが重要です。
(志村さん)
動機付けという点で言うと、これするといいことがあるよ、という即物的なメリットがあった方が人は動きます。さらに、健康意識は伝播します。肥満体質の人が多し組織だと肥満になりやすいというように。小さい組織から初めて、それを伝播させていくというのがいいですね。
(谷本)
DMM様の例ですが、この健康意識の伝播という点に注力していますね。若い人に研修を行うと、配属後の部署でその意識が広まっていったそうです。
Q:最初の一歩として健康経営をやる上で、運動・食事・睡眠のうちオススメな取り組みは何でしょうか?
(樋口さん)
睡眠が一番良いと思っています。月曜日の生産性が低いというのはまさにプレゼンティズムの問題で、プレゼンティズムには良好な睡眠習慣が出来ているかどうかが影響しますから。
(志村さん)
大きな会社だと食事がやりやすいですね。食事改善すると睡眠も次第に改善していきます。
まとめ
「攻めの健康経営」というテーマのもと、経営と医療の二つの観点から迫った今回のイベント。
企業には今後ますます健康経営への取り組みが求められてきますが、その際には一人一人の生活習慣や体内時計にまで目を向けた取り組みを行わなければ不十分とのことでした。
しかし、個人の生活習慣にまで目を向けられていない企業様が多いのではないでしょうか。
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登壇者情報 (敬称略)
■樋口 毅(Tsuyoshi Higuchi)
株式会社ルネサンス 健康経営推進部 次長
健康経営コンサルタント
健康経営会議実行委員会 事務局長
NPO法人健康経営研究会 健康経営会議事務局<経歴>
・順天堂大学大学院 健康・スポーツ科学研究科修士課程修了(専門:スポーツ医学専攻)
・トッパングループ康保険組合入職、全国110社のグループ企業の健康プログラム開発業務を担当
・中央労働災害防止協会、心理相談員、運動指導専門員に関する専門スタッフ認定研修の講師を担当
・凸版印刷株式会社 人事労政部に転籍し、休職者の復職規定等のルール制定、経営者向けメンタルヘルス研修、安全衛生研修、新入社員、若手社員向けのセルフケア研修、管理職に対するラインケア研修、人事担当者の育成研修等の講師担当
・株式会社保健同人社(リクルート医療ユニット)にて、特定保健指導、EAPプログラムの企画開発責任者を担当
・現職の株式会社ルネサンス 健康経営推進部にて健康経営サービスプログラム開発責任者
・健康経営会議実行委員会 事務局長として、全国の「健康経営会議」開催をコーディネート
・健康経営コンサルタントとして、プランニングサポート、担当者養成、自治体での健康経営の普及・啓発を支援
<自己紹介>
大学進学時より、「働く人の健康をビジネスにする」ことをテーマに自らのキャリアを開発。
現在は、国が政策として進める「健康寿命の延伸」、「生涯現役社会の構築」を支援すべく、健康経営の普及啓発、企業・自治体の健康経営コンサルティング、ビジネスパーソンへの健康教育等の活動を展開。
プライベートでは、呼吸家の妻の影響を受け、東京で働きながら神奈川県藤沢市(海)と長野県上田市(山&田)の二拠点生活を送る。
■志村 哲祥(Akiyoshi Shimura)
医師・医学博士
精神保健指定医・日本医師会認定産業医
東京医科大学精神医学分野睡眠健康研究ユニットリーダー(兼任講師)
菅野病院精神科・睡眠外来
株式会社こどもみらい取締役(R&D)
<経歴>
東京都出身
東京学芸大学附属高校、順天堂大学医学部医学科卒
東京医科大学大学院(睡眠学講座)博士課程修了
大学在学中より睡眠医学の研究に携わり、また、産学連携企業を立ち上げている。
<自己紹介>
職域や学校保健現場での睡眠・体内時計におけるフロンティアランナーの研究医。
多くの人の将来が睡眠の問題のために閉ざされている現状に対し、エビデンスに基づいた対策で未来を変え、健康と幸せを作るための研究を日々続けている。
体内時計に基づく生産性向上のための分析や、社会生活と睡眠リズムについての研究は、複数の学会賞を受賞している。
産学連携では、再春館製薬においてRCTを行い、睡眠改善による企業利益の向上効果を実証した。
■谷本 潤哉
株式会社O: Founder/CEO
広告代理店でリーダーとして採用、中間層の定着に従事しながら「社員のモチベーションデザイン」を実現するためスタートアップ経営者と伴走。 HR/業務データを活用し「楽しく持続的にハイパフォーマンスを発揮できる」組織の一般化を目指して、2016年にO:を創業。
「社員間のフィードバック」「OKR」「1on1支援」を組み合わせたパフォーマンス・マネジメントサービス「Co:TEAM」を運営。
経済産業省J-startup採択|週刊ダイヤモンド「日米ヘルステックスタートアップ20選」選出。
twitter
谷本潤哉 note
O: ホームページ
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