メンターとメンティーとは?制度のメリット・デメリット・マッチングのポイント【事例付き】

メンターとメンティーとは

メンターとは、英語で「助言する人」という意味です。

また、メンターには、良き指導者・助言者という意味があり、ここでは主に部下や後輩から仕事・キャリアの相談を受ける、またはその人たちのロールモデルとなれる先輩社員を指します。

メンティーとは、逆に「助言される人」という意味で、メンターからメンタリング(助言)を受ける人です。ここでは主に新入社員を指します。 

メンター制度への注目の背景

以上のような定義がされるメンターとメンティーですが、それらを支えるメンター制度が注目された背景にはどのようなものがあるのでしょうか。

本パートでは、メンター制度が注目されるようになった背景を2つに分けて解説していきます。

職場における人間関係の希薄化

1つめは、職場における人間関係の希薄化です。

フレックスタイム制など働き方が多様化する流れの中、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行によりリモートワークや時差出勤の導入が急速に進みました。

これらにより、社員同士が対面で会う機会が激減し、人間関係が希薄化し、社員の孤立が問題となりました。

これらの解決のために、直接の利害が比較的少ないメンターによる補助が注目されるようになったのです。

キャリアの多様化

2つめは、キャリアの多様化です。

企業が競争力の向上を求められ、成果主義的な制度に移行を進めていることから、人材の流動性が高まっています。

そのため、キャリアパスが多様化し、会社に絶対のロールモデルがなくなった中、個々人のロールモデルとなりうるメンターの必要性が高まっているのです。

メンター制度の目的

メンター制度の目的は、他部署の先輩社員と新入社員がメンターとメンティとしてそれぞれペアになり、メンターに悩みや不安を解消出来るようにする事です。

また、メンター制度は、他の研修(OJTやコーチングなど)と違って直属の上下関係ではないため、メンターとメンティーの間に業務上の利害関係はありません。

これにより、新入社員は気軽に、業務やメンタル面でのアドバイスをもらうことができます

また、上司と部下の間では話しにくい話題やキャリアの相談などを定期的に行えることで、メンターが新入社員の精神的支柱にもなれるため、人材の定着にもつながると近年注目されています。

メンターが適切なタイミングでの声かけやサポートをするには、新入社員の精神状態や業務の進捗状況を把握しておく必要があるでしょう。

Co:TEAM(コチーム)では、部下の業務進捗状況やモチベーションを可視化できるため、メンターが新入社員をサポートする上で指標にすることができます。

若手社員の定着と活躍を促すマネジメントとは? ~Z世代の特徴に関する統計データから考える育成のコツ~

メンター制度のメリットと意味

メンター制度は、前述の通り多くの企業で導入されており、様々なメリットや意味があります。

実際に厚労省による調査によれば、人材育成を中心として、数多くの項目で半数以上の回答者が「直接的な効果があった」と回答しています。

本パートでは、会社・メンター・メンティー3つの観点から、メンター制度のメリットと意味を紹介します。

新入社員への細かいサポートが可能

1つめのメリットは、新入社員への細かいサポートが可能である点です。これは会社にとってのメリットといえます。

これは、OJTとなどの新人研修と違い、メンター制度ほとんどが少なくとも半年を超えた長期にわたるサポート制度であるためです。

また、部署を超えた社員同士のコミュニケーションが活性化するため、社内の風通しもよくなり、結果的にソフト面が原因の離職率を減らすことが期待できます。

さらに、そうして育てたメンティである新入社員が、やがて助言をするメンターになっていく、このサイクルが社内全体の風土変化に繋がっていきます。

これを「メンタリングチェーン」と言います。

スキルアップ・成長

2つめのメリットは、スキルアップや成長が見込めるという点です。これもメンターにとってのメリットといえます。

メンターは先輩として、異なる部署の悩みを抱える新人に1on1で面談をするわけですから、親身になって寄り添い、また自分の経験やアドバイスを工夫して話す必要があります。

これによってコミュニケーションスキルや指導スキルが向上します。

精神的な安心感を得られる

3つめのメリットは精神的な安心感が得られるという点です。これはメンティーにとってのメリットといえます。

業務での慣習や社風など新入社員にとって入社前では分からないことがたくさんあります。

そこで、直属の上司ではない先輩に聞きたいことや悩みを定期的に相談できることで、理想と現実のギャップを着実に減らし、落ち着いて仕事に取り組むことができます。

コミュニケーション能力の向上

4つめのメリットは、コミュニケーション能力の向上です。これもメンティーのメリットといえます。

1on1での面談で、自分の話を相手にしっかりと伝えることはコミュニケーション能力の向上にも繋がります。

また、固定された上長だけでなく、他部署の先輩と交流できることで、部署を超えた横の交友関係が広がります。

Co:TEAM(コチーム)では、業務の進捗過程や結果に対して、部署内外からフィードバックや賞賛を送ることができます。そのため、部署を超えた横のつながりを強くすることができるでしょう。

他部署の多様な働き方を知れる

5つめのメリットは、他部署の多様な働き方を知れる点です。これもメンティーのメリットといえます。

上記のメリットに関連して、異なる部署で働く先輩の話を聞けることでさまざまなロールモデルを知ることができます。

これによって、将来のキャリアを想像しやすいというメリットがあります。

メンター制度のデメリットと問題点

このように多方面で効果が期待できるメンター制度ですが、いくつかのデメリットもあります。

本パートでは会社、メンター、メンティーの三つの観点からデメリットと注意点を紹介します。

マッチングが難しい

1つめのデメリット・問題点は、マッチングが難しい点です。これは会社にとってのデメリット・問題点といえます。

社員の性格や目標のキャリアを見極めてベストなマッチングをさせることは非常に難しく、その実現のために多くの労力を必要とします。

一見相性が良さそうでも人間同士の付き合いであるため、必ずうまくいくとも限りません。また、1on1の面談形式であるために各ペアの進捗に必ずばらつきが出てしまいます。

全体の足並みを揃えるためにも、定期的にマッチングや制度を検討する必要があるでしょう。

メンターの人員不足

2つめのデメリット・問題点は、メンターの人員不足です。これも会社にとってのデメリット・問題点といえます。

メンターに選ばれる社員はロールモデルとして適したキャリアがあり、かつ相手の悩みをしっかり聞ける人材であることが望ましいです。

ですがこうした社員が大勢いるわけではなく、またたいていが自身の業務で多忙なため、メンター制度に協力できるような時間の余裕がありません。

メンターの負担が大きい

3つめのデメリット・問題点は、メンターの負担が大きい点です。これは文字通りメンターにとってのデメリット・問題点といえます。

1on1をベースとしているメンター制度は時間的負担、また相手の悩みを受け止めてあげられるのは自分しかいないという点では心理的な負担も増えます。

先輩社員としてメンティーとの関係性構築にも積極的に動かなくてはいけないメンターは、業務以外に考えなくてはいけないことが多くなります。

メンティーの行き詰まり

4つめのデメリット・問題点はメンティーの行き詰まりです。これは、メンティーにとってのデメリット・問題点といえます。

ペアになったメンターとの相性があまりよくなかった場合、メンティーは悩みを誰にも相談できなくなり、行き詰まってしまいます。

またマッチングの不調和をメンター本人には直に伝えづらく、メンター本人も違和感に気づけないこともあります。 仲介する第三者や相談先を最初に確保しておくことが大事でしょう。

進捗状態のばらつきによる弊害

5つめのデメリット・問題点は、進捗状態のばらつきによる弊害です。これもメンティーにとってのデメリット・問題点といえます。

各ペアで進捗状況がズレると、他のペアとのサポート具合と比較して不公平感が生まれてしまうことがあります。

またそれぞれのメンターからバラバラな助言を受けてしまい混乱したり、逆にメンターに依存しすぎて全てをメンターからの助言待ちになる可能性もあり、メンティーの成長具合にばらつきが出てしまいます。

メンター制度導入のステップと成功のポイント

企業がこのメンター制度とその効果をどれほど重視しているかをきちんと周知させ、制度をバックアップすることが、メンター制度導入の重要なポイントとなります。

ここでは導入時に注意しておきたい点を4つ紹介します。

運用ルールの決定

制度を導入する上で最初に決定しなければいけないのは運用ルールです。

メンター、メンティー同士の守秘義務や、相談窓口の設置、実施時刻(業務時間外には会わないなど)、実施期間など基本的ルールの設定をしましょう。

メンターとメンティーのマッチング

メンターとメンティーとなる対象者を選出してマッチングを行います。

選び方は、自薦・他薦の他にも事前にアンケートやヒアリングを行うなどさまざまです。

厚労省が出しているマニュアルでは

  • メンティのキャリア志向にメンターの経歴が合うか 
  • メンティの期待とメンターの特性が合うか 
  • メンティ、メンターが直属ライン以外か
  • メンティの能力開発ポイントを補強できるメンターか

の4つを選定基準にあげています。

ガイダンス

メンター制度がうまく運用されていくためには研修の徹底が欠かせません。

厚労省が公開している「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」によれば、55.9%の人がメンター制度のために必要なことは「メンター、メンティに対する事前の説明、研修会の実施」だと回答しています。

1on1の面談が基本となっていることもあり、メンターとメンティの両者に制度の意味や目的を理解させ、ガイドラインをきちんと教育をすることが重要です。

振り返り・検討

メンターとメンティーの面談がちゃんと機能しているか、期待していた成果はあらわれているか、何か問題が発生していないか、定期的に確認し制度を見直すことも、重要なステップの一つです。

制度側があまり介入しすぎるのもよくありませんが、何か問題が発生しているときにきちんと相談口を設け改善を図れるようにしておきましょう。

メンターやメンティーに向けてそれぞれ、アンケートやチェックシートなどのフォーマットを作成するのも有効です。

振り返りの促進のためにはツールの導入も有効です。ツールおすすめ比較については以下の記事をご覧ください。

メンター制度の事例

メンター制度は、業務だけで伝えきれない社内風土がある、またはソフト面が原因での離職率が高い企業に特に効果を期待できます。

離職要因と離職防止のためのチェックリスト22

ここでは、女性活躍推進の例と、メンター成長のための例をそれぞれご紹介します。

大手精密部品メーカーの事例~女性活躍推進〜

女性が自身のロールモデルを発掘しづらい現状に、メンター制度はピッタリと言えるでしょう。

この会社では、女性社員の管理職を身近にイメージしてもらうために、当該者にメンターとなってもらい、ランチセッションなどで気軽な交流を行っています。

そこでコミュニケーションを活発化したあと、後日特に悩みがありそうな人をピックアップして個別にメンター制度を紹介しました。

特に女性は、出産や育児といったライフイベントを乗り越えて仕事をする必要があります。

女性社員の先輩が少ない、話す機会がないことは、自分の将来を想像できないことに繋がるため、新入社員は不安になります。

こうした交流を通じて女性社員の活躍の場を広げられるので、とても効果的な導入例といえます。

ITシステムソリューション企業の事例〜メンター側や会社の成長〜

メンター制度の優れた点に、相互成長という点があります。

この会社では定期的に『制度担当者』との面談も実施し、より良いマッチング、そして制度のブラッシュアップへとつなげています。

またメンター側も「自分が入りたての時に感じた不満や悩み」「誰に話していいか分からない不安」など新人時代の感覚をメンティーとのコミュニケーションを通じて思い出し、当時の自分が求めていた不満の相談相手となることを目指して対応したことで、メンティーとの良好な関係を構築できたそうです。

またそういった経験が今後の後輩との接し方の指針となり、自分自身の仕事の姿勢や今後のキャリアを考えるきっかけにもなります。

メンター制度はメンターにとっても学びの場であるのです。

まとめ

広い組織であればあるほど、新人の精神的支柱となる先輩社員の存在は、離職率の低下にも繋がるため、メンター制度を取り入れる企業は増えています。

ここで構築された関係は、直属の上下関係ではないからこそ、風通しのよさ、ひいては組織全体の風土作りのきっかけにもなります。

現在リモートワーク下で社内のコミュニケーションの機会が減少している会社は、特に、メンター制度を試してみてはいかがでしょう。

リモートワーク下でメンター制度を取り入れるには、メンターが新入社員の業務状況やモチベーションを可視化しやすい状態にすることが重要です。

パフォーマンスマネジメントツールCo:TEAM(コチーム)を用いることで、メンターとしてサポートの質を向上させることができるでしょう。

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