1on1とは?目的・意味・効果・メリット・注意点・質問方法・コツ【テンプレート付き】

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1on1とは?目的・意味・効果・メリット・注意点・質問方法・コツ【テンプレート付き】

1on1ミーティングとは・注目されている背景

1on1(1on1ミーティング)とは、アメリカのシリコンバレーで人材育成を目的として確立された手法で、定期的に上司と部下の1対1で行われる対話を指します。

日本でもヤフー株式会社などが取り入れたことから注目を集め始め、2020年には、規模に関わらず約4割の企業が導入しているというデータがあります。

出典:株式会社HRビジョン「日本の人事部 人事白書2020」

また、株式会社uniposの調査によると、75%以上の企業が月に1回以上1on1を実施しているという結果が出ています。

以上により、多くの企業において1on1ミーティングが導入され、定着している様子が伺えます。

このように、多くの企業から注目されている1on1ですが、注目の背景は以下の3点が考えられます。

1. 予測不能なVUCA時代

現代の社会やビジネス界は、変化のスピードが速く予測不能であるVUCAの時代だと言われています。

V(Volatility):変動性

U(Uncertainty):不確実性

C(Complexity):複雑性

A(Ambiguilty):曖昧性

この頭文字をとってVUCA時代と呼びます。

そんなVUCA時代の中で、企業は生き残る必要があります。

柔軟で変化に強い会社を作らなくてはいけない需要と、個々の主体性や創造性を重要視する現代の価値観がマッチして、今までとは違う新しいマネジメント方法が必要になっていったのです。

2. 人材の減少と流動化

特に日本では、上図のように29歳以下の若者の人口は、昭和50年以降一貫して減少しており、働ける人材が年々減少しています。

さらに、終身雇用制度に縛られず自身のキャリアに合わせて転職することも当たり前の時代になりました。

これにより、企業にとって、流動的になった人材をいかに会社へ定着させるかが重要な課題となりました。

そしてこの会社への定着率を高めるために、個々への密なコミュニケーションの必要性が生まれたのです。

3. 多岐にわたるロールモデルの存在

変化が激しく多様性を重要視する現代社会において、分かりやすく明確なロールモデルというものは存在しなくなりました。

会社にとっても「理想的な人材」が固定されておらず、多様化しているのです。

さらに時代に即して必要スキルもどんどん変化しており、人材育成手法もそれに応じて柔軟に対応していく必要性が生まれました。

こういったニーズに対応して、1on1の需要は高まっていきました。

1on1ミーティングの目的

人材育成の手法として知られる1on1ですが、具体的には5つの機能を有しています。

  • 経験学習の促進(内省支援)
  • 意欲の喚起
  • 情報共有の促進
  • 関係性の強化
  • 課題解決の促進

この5つの機能を通じて企業はどのような利益を得られれば1on1を実施する意味があるでしょうか?

結論として、企業が1on1を実施する最終的な目的は「人材の定着」と「パフォーマンス・業績向上」の2つであると言えます。

本パートでは、1on1ミーティングの目的を2点解説します。

1.人材の定着

1on1ミーティングの目的の1つ目は、人材の定着です。

人材が定着することの利点は、離職者を補充するコストの削減や、優秀な社員を逃さないことなどが挙げられます。

まず、1on1によって上司と部下の関係性が強化されます。

これは5大機能の内の1つで、対話を通して相互理解を深めることで信頼関係が構築されるということです。

その結果、部下のエンゲージメントが向上し、離職率の低下が見込まれるでしょう。

また、部下の意見をくみ取り、オペレーション改善や働き方改革が推進されれば、部下にとって働きやすい環境が生まれ、人材の定着に繋がります。

  • 退職者1人あたりの企業の損失とは?
  • 退職の真因と求められるマネジメント行動とは?
  • 離職防止のために人事・経営が採るべき施策とは?
  • 1on1の改善を通じて離職防止を強化するためのチェックリスト

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2. パフォーマンス・業績向上

1on1ミーティングの目的の2つ目は、パフォーマンス・業績の向上です。

1on1ミーティングは従来育成の手法であり、対話を通じて部下を育成しパフォーマンス向上に繋げることが本来の意図です。

「対話を通じて部下を育成する」とは、5大機能の内の「学習の促進」、「意欲の喚起」「課題解決の促進」が効力を発揮した状態のことを指します。

まず、仕事の経験が豊富な上司とコミュニケーションを取ることによって視野を広げたり、過去の経験を昇華していく事が出来ます。

このように経験学習が促進されると、部下は自分を見つめなおす機会ができるため、現状より視座を高めることができるでしょう。

次に、部下が業務上で抱えている問題・課題を共に解決してあげることで、より生産性を高めることができます。

また、不安や悩みが解消され、自分の持ち味を発揮できるように促せば成長意欲を喚起することもできるでしょう。

このように、1on1を実施することで視座を高めたり、生産性、意欲の向上を通して部下1人1人のパフォーマンスが向上し、業績向上が狙えます。

1on1ミーティングの課題・問題点

1on1ミーティングは注目されている一方で、運用に課題を抱えているケースが少なくありません。

本パートでは1on1の課題を3点解説します。

1. 形骸化してしまいやすい

株式会社ビジネスコーチ株式会社の調査によると、約39.9%の企業が形骸化を問題視しており、50.9%の企業が習慣化・定着化をするための仕組みづくりを課題として設定しています。

1on1ミーティングでは、お互いに何を話していいかわからなかったり、事前準備が行われていなかったりすることで、「ただなんとなく実施しているミーティング」になり、形骸化してしまう恐れがあります。何のために行っているのか理解していない、周知されていないまま実施されていると、1on1ミーティングの効力が発揮されません。

さらに上司がわかっていても、部下が1on1の意義や活用方法を理解できていない可能性もあります。1on1を定着化させるためにも、上司と部下それぞれが、1on1ミーティングを行う目的やその効果を認識し、適切な事前準備を行うことが重要です。

2. 時間と工数がかかる

上図の通り、国内の管理職の約9割がプレイヤーとしても業務を行っているため、常に多忙を極めている状態になっています。

1on1ミーティングをするためには多くの時間と工数がかかるため、忙しいマネージャーにとっては通常業務の妨げになってしまう恐れがあります。

ミーティングの運用をマネージャー個人に任せられていて研修や制度が整備されていない場合はこういった事態に陥りやすいでしょう。

こういったことを避けるためにも、1on1に対応したツールを利用したり、または会社全体で一律のテンプレを使用するなどを行うことで時間・工数削減をねらいましょう。

3. 効果に個人差が出る

上司や部下の相性、上司のコミュニケーションスキルなどから、1on1ミーティングの進捗や効果に個人差が出てしまう場合があります。

会社全体で正しい1on1の研修が行われていなかったり、何となくミーティングを行っていると、実施相手によって個人差が生まれてしまいます。こうした事態を避けるためにも、研修の実施・充実をはかり、誰が行っても効果的な1on1ミーティングを目指すようにしましょう。

また、そもそもコミュニケーションスキルという奥深い領域の施策にもかかわらず、効果を拙速に急ぎないように注意する必要があります。

単にスキルだけではなく、マインドセットやその時の状態にも影響しますから簡単ではありません。

「日々鍛錬」の気持ちを持って取り組む事が重要です。

1on1ミーティングの注意点・コツ

1on1は、正しく行うことで部下の成長を大きく促すことができます。

上司の進行方法やヒアリング力が効果に直結する1on1では、以下の進行上の注意点を意識するだけで効果を飛躍的に高める事が可能です。

出典:株式会社ビジネスコーチ株式会社「1on1ミーティングに関するアンケート」

上図は、「1on1を成果につなげるうえで、最も重要だと思うものは何か」というデータであり、「上司側の1on1スキル(57.7%)」や「経営幹部のコミットメント(18.4%)」が上位を占めています。

本パートでは、上図を参考にして、1on1のコツを3点解説します。

1. 上司と部下の期待値をすり合わせる

1on1を成果につなげるために重要な要素として、57.7%の企業が「上司側の1on1のスキル」と回答しており、多くの企業が1on1を実施する側の力量に注目しています。

1on1で上司に求められているスキルは、部下との期待値をすり合わせる能力のことを指します。どの話題についてどう接してほしいのかを上司が理解していれば、部下にとっては充実した1on1となり、エンゲージメント・パフォーマンス向上につながります。

出典:株式会社「1on1データ解析レポート」

本来コミュニケーションの取り方は人それぞれであり、会話する中での見極めが重要になりますが、統計を出すとトピックによって接し方の希望は偏ってくるようです。

したがって、上図を参考に、「どの話題」について「どのような接し方」をすればいいのかを調整しましょう。

2. 経営層が積極的にコミットする

1on1を成果につなげるために重要な要素として、18.4%の企業が「経営層のコミットメント」と回答しています。

1on1は現場で行われることが多く、経営層など上の立場になると関心が薄まる場合が多いです。

しかし、1on1を行う現場マネージャーや中間管理職も制度の意味を完璧には理解できていない場合があります。

上の立場の人に指示をされたからとりあえず行っているという続けば、形骸化を招いてしまいます。

したがって、何のためにどうやって1on1をするのかを経営層から中間管理職に啓蒙し、教育することで効果的な1on1を実施しましょう。

3. 評価制度と連動する

1on1を成果につなげるために重要な要素として、6.7%の企業が「評価制度と連動する」と回答しています。

1on1の内容を評価出来る仕組みを取り入れるようにしましょう。

1on1はあくまで部下のための時間であり、部下が効果を実感できていない1on1は、何かしらの改善の余地があると言えます。

満足度が低い場合、どのように改善すべきか、上司側にフィードバックする必要があります。

1on1に特化したツールでフィードバックをしてもらったり、進行する上での疑問点や不満がないか定期的に確認するようにしましょう。

まとめ

市場の変化や働き方改革、人々の考え方の変化に対応するため1on1は既に多くの企業で取り入れられています。

しかし、目的意識を全社で持ち、前提条件が揃って初めて1on1はその効果を発揮します。

正しい運用で最大限に1on1を活用し、人材育成を成功させましょう。