適切な人事評価は、従業員のモチベーションアップやエンゲージメント向上にとって非常に重要です。
しかし、人事評価に不満があると感じる従業員や、不満を解消しなくてはならない管理職の方も多いのではないでしょうか。
実際に、株式会社カオナビの研究機関である「カオナビHRテクノロジー総研」が2019年に実施したアンケートでは、人事評価について満足している人は2割未満という結果になりました。
このことから、多くの人が人事評価に対して何らかの不満を持っていることがわかります。
それでは、従業員が抱える人事評価に対する不満をどのようにしたら解消できるのでしょうか。
本記事では、人事評価の不満がなぜ起こるのか、また、不満を放置してしまったらどのような影響が出るのか、不満への対処法について解説していきます。
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人事評価への不満の原因
カオナビHR総研の調査レポートによると、従業員が人事評価に不満を持つ要因が大きく5つあることが明らかとなりました。
最も多い不満が「人事評価に納得感がない」(55.9%)で、「評価者が信用できない」(39.7%)、「評価理由に納得感がない」(38.9%)、「評価項目・目標設定が不適切」(36.4%)、「期中で状況が変わったことが考慮されていない」(16.6%)と続いています。
人事評価への不満を放置することは、さまざまなリスクを引き起こす可能性があるため、一刻も早く解消する必要があるでしょう。
不満を放置するリスクは次のパートで詳しく説明します。
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人事評価に対する不満を放置するリスクとは?
人事評価に対する不満を放置するリスクは主に3つあります。本パートでは、その3つのリスクについて詳しく解説します。
従業員の退職につながる
従業員が人事評価に対する不満を抱えて放置されると、結果的に組織から人材が離れていきます。彼らが自分の働く環境に満足できず、他社のより魅力的な人事制度に惹かれるのは自然な流れです。
この流れによって、組織の中で意欲を失ったり、満足できない雰囲気に包まれたりすると、従業員の退職が始まります。優れた人材が去ると、組織全体の生産性が低下し、これが悪循環を引き起こします。
そして、この状況になると立て直すのが難しく、組織全体の力が弱まり存続が危うくなることもあるでしょう。従業員が退職することは、組織において人材の穴埋めや新たな採用にかかるコストだけでなく、現場の士気の低下や企業の評判の悪化などさまざまな影響をもたらします。
従業員のモチベーションの低下
従業員が人事評価に対する不満を抱えたまま仕事を続けると、初期の不満を口にする段階ではまだ、状況を改善しようとする意欲があります。しかし、その不満が解消されないまま続くと、徐々にその従業員のモチベーションが低下していきます。
不満が蓄積され、どうしようもないと感じると、仕事に対するやる気が次第に失われていきます。やがて、「状況を変えることは現実的でない」「自分の努力は認めてもらえない」といった考えが強くなり、最終的には必要最低限の労力しか出さなくなることもあります。
こうした状態が続くと、従業員のモチベーションは低下し、その結果、業務の質や成果が損なわれてしまうことが予想されます。
従業員のモチベーションが低下すると、業務の効率や品質が低下し、組織全体の生産性が減少するでしょう。
組織の生産性の低下
不満を抱えた従業員のパフォーマンスが低下すると、組織の生産性が低下するだけでなく、それが広がり全体の生産性にも悪影響を及ぼす恐れがあります。
人事制度に対する不満は、たった一人の従業員だけが抱えていることは少ないです。実際には、複数の従業員が同様の不満を抱えている可能性があります。そのため、一人の従業員がモチベーションを失ったり態度が悪化すると、その不満が他の従業員にも広がりやすくなります。
このように、各々が少しずつ抱えていた不満が相互に影響し合い、組織全体の雰囲気が悪化していきます。その結果、チームワークが損なわれ、組織全体の生産性が低下してしまうのです。
従業員が人事評価に対する不満を抱えたまま業務を続けると、その従業員のモチベーションが低下し、最大のパフォーマンスを発揮することが難しくなります。
不満が生じる人事評価の3要素
前パートでは、従業員の不満を放置する3つのリスクについて説明しました。
では、従業員が不満を抱く要因にはどのようなものがあるのでしょうか?
従業員の人事評価に対する不満の要因は大きく3つに分けることができると言えるでしょう。
本パートでは、
- 人事制度
- 評価者
- 評価結果
の3方向に向かう不満を順番に解説していきます。
人事制度への不満
第1の不満要因は、人事評価制度に対する不満です。
具体的には3つの細かい原因に分けることができ、それらは以下の通りです。
- 評価基準に問題がある
- 外部環境の変化に対応できていない
- 評価が待遇に結びつかない
そもそも制度に対して不満があれば、いくら上司や評価者が努力しても不満は解消しません。
本パートでは、この3つの不満について具体的に解説します。
評価基準に問題がある
「評価基準に問題がある」とは、多くの場合、評価の基準が従業員に明確に提示されていなかったり、そもそも明確な評価基準が存在していなかったりする状態を指します。
評価基準が明確でないと、従業員は受け取った評価結果に対して納得感を持てず、それが不満につながってしまうのです。
また、評価基準の不明瞭さは評価者によって基準に対する解釈が違うという状況を引き起こす要因にもなります。
さらに、 成果のみが評価され、それに至るまでのプロセスや各従業員が抱える事情を一切考慮しない評価基準も従業員が不満をもつ原因となりやすいです。
制度が形骸化している
人事評価制度はあるものの、それが現代のビジネス社会にあっておらず、制度自体が機能しなくなっている状態も従業員の不満を引き起こす原因となる可能性があります。
たとえば、従業員数が増えたり社内での働き方が変わったりした場合、既存の人事制度では従業員を適切に評価することができず、制度が形骸化してしまうでしょう。
社会や従業員の働き方、また組織構成の変化にともなって、時代に即した制度になるよう、定期的に人事制度を見直し、改善していく必要があるのです。
評価が待遇に結びつかない
評価が待遇に結びつかないということは、努力してもそれが報酬や昇進に繋がらないことになるので、従業員のモチベーションの低下を引き起こし、また、評価制度に対する不満をもつ要因となるでしょう。
人事制度は「等級制度」「評価制度」「賃金制度」の3つの要素から成り立っています。
このうち、「評価制度」と「賃金制度」の連動がうまく機能していないと、従業員の組織への貢献や自己成長が待遇の改善に繋がらず、望んだリターンが得られないことを不満に思うでしょう。
失敗しない人事制度の設計方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
評価者への不満
前パートでは、従業員の人事制度への不満について解説しました。
第2の不満要因は、評価者に対する不満です。
具体的には3つの細かい原因に分けることができ、それらは以下の通りです。
- 評価者によって評価結果に差がある
- 評価結果に対するフィードバックが適切に行われていない
- 恣意的、あるいは客観性の乏しい評価になってしまっている
制度が適切であっても、評価者に対して不満があれば、適切な人事評価とはいえず、評価者に対する意識づけをしなくてはなりません。
評価者によって評価結果に差がある
評価者によって評価の結果にばらつきが出てしまうことは、人事評価制度における最も大きな問題の一つです。
同じ行動や成果に対する評価が誰が評価するかによって変わってしまうと従業員は評価結果に対して不公平感を抱くようになるでしょう。このような状況が起きてしまう原因の一つは、評価基準が不明瞭で評価者がきちんと基準を理解できていないことです。
また、評価者も人ですので、「ハロー効果」や「寛大化効果」といった人事評価エラーが起きることで、評価にばらつきが出てしまう場合もあります。
評価者が適切な評価をできるよう、必要であれば評価者に対する研修を行うことも検討してみましょう。
評価結果に対するフィードバックが適切に行われていない
評価結果に対するフィードバックが適切に行われていないと従業員は自身の評価結果の理由を知ることができず、評価が適切に行われているのかを疑問に感じてしまうことがあるでしょう。
特に、評価結果が自己評価より低い場合、従業員はなぜそう評価されたのかを知りたいと考えるはずです。しかし、フィードバックが不十分だと説明を受ける機会がなく、従業員の成長やモチベーションの向上が阻害され、組織内で不満や不公平感が生まれることがあります。
人事評価の納得感を維持するためには、評価が下されたあとの評価者と被評価者の間でのコミュニケーションが鍵となるのです。
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恣意的、あるいは客観性の乏しい評価になってしまっている
評価者にとって、人事評価を行う際に客観性を保つことは最も重要だと言えるでしょう。評価者と被評価者間の個人的な問題や主観が評価に反映されてしまうと、その評価は公正であるとは言えず、従業員が不満を持つ原因となってしまいます。
評価者によって評価結果に差異が生じることを防ぐためにも、会社によって定められた評価基準や項目に沿った評価を行うようにしましょう。
また、評価者が客観性を維持した評価を行えるように研修によって訓練することも効果的でしょう。
評価結果への不満
ここまでに、評価制度に対する不満と評価者に対する不満について説明しました。
次に、第3の不満要因である、評価結果に対する不満について解説します。
自己評価と実際の評価結果が一致しない
評価結果に対する不満の多くは、自己評価と実際の他者からの評価が乖離することに原因があります。
具体例として、成果の難易度が客観的にはわかりにくい場合が挙げられます。
本人は難しいことを成し遂げたと思っていても上司にそれが伝わっておらず、低い評価がつけられてしまい、評価に対して不満が生じるのです。
これを突き詰めると、評価制度や評価者に何らかの要素が不足しているために起こるといえます。
人事評価への不満の解消法
ここまで、従業員の人事評価への不満の原因と、それを放置するリスクについて解説していきました。
では、人事評価への不満を解消するためには何をすればいいのでしょうか。
以下で5つに分けて解説していきます。
人事評価制度を最適なものに修正する
人事評価への不満の解消法1つ目は、人事評価制度を適切なものに修正することです。
人事評価制度の修正の際のポイントについては、以下の記事をご覧ください。
また、これは継続的に行わなくてはなりません。目まぐるしく変化する現代社会において、会社の内外部環境に応じて柔軟に制度を変化させることはとても重要です。
人事評価制度の理解を従業員に促す
人事評価への不満の解消法の2つ目は、人事評価制度の理解を従業員に促すことです。
せっかく人事評価制度が最適なものとなっていても、その趣旨や目的が従業員に理解されていなくては不満の解消には達せません。
また、人事評価制度に対する従業員の理解が深まることは、全社的な目標のための具体的な個人の行動指標を理解することにもなります。そのような意味でも、人事評価制度の理解は重要です。
人事評価制度の理解を従業員へ促すためには次のような施策が考えられます。
- 全社的な説明会
- 管理職への研修
- ワークショップ
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評価とともに適切なフィードバックを提供する
人事評価への不満の解消法の3つ目は、適切なフィードバックです。
目標への達成度を表す評価のみでは、これからの目標への達成法や、そのために何が足りないのかを理解できません。
そのような具体的な課題やプロセスの認知のためにフィードバックは不可欠です。
また、それらを直接伝えるためにフィードバック面談を実施するのも一つの手段でしょう。
従業員とのコミュニケーションの場を定期的に設ける
人事評価への不満の解消法の4つ目は、定期的なコミュニケーションの場の設定です。
評価の際にフィードバックの場を設けた上で、次の目標に向かうために短いスパンでコミュニケーションの場を設けることで、従業員の頑張りの方向性が誤ったままになってしまうことを防げます。
具体的な施策としては、1on1ミーティングを短期スパンで行うことが挙げられます。
1on1に関する記事はこちら。
評価者に対する教育を行う
人事評価への不満の解消法5つ目は、評価者に対する教育を行うことです。
評価者の適切な指導力や評価スキルを向上させることによって、評価の公平性と理解度が高めることが期待できます。
評価者は客観的かつ公平な評価を行うためのトレーニングを受け、人事評価制度や評価方法、基準についての深い理解を得る必要があるのです。これにより、評価者間での誤差を減らし、評価に対する従業員の納得感を向上させることができるでしょう。
また、評価者の印象や先入観による評価の歪みである「ハロー効果」などの「人事評価エラー」をなくすための訓練も重要です。このようなエラーを排除することで、評価者は公平な視点を保ち、適切な評価を行うことができるのです。
まとめ
以上のように、本記事では人事評価への不満の原因とそれらの不満を放置するリスク、その解消法について解説してきました。
もし抱える部下が現在の人事評価に不満を持っているのであれば、ここで挙げたような対処法を考えてみてはいかがでしょうか。
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評価の不満は主に運用面にあり、評価制度が良いものであっても評価制度が上手くいかないということは、よくあることです。
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