人事評価は社員の賃金、賞与、昇格に影響を与える重要な指標です。
特に近年では、年功序列から成果主義に移行する企業も増え、従業員の能力やスキルに対する適切な評価が求められています。適切な人事評価を確立することによって社員のモチベーションを上げ、会社の利益を最大化できます。
しかし、人事担当者にとって、人事評価における評価項目の作成・評価ウエイトの設定は難しい問題です。「どのような評価項目を作れば社員の行動に結びつくのだろう」「行動に結びつく評価体系の作り方がわからない」と悩む人事担当者は多いのではないでしょうか。
そのため今回は、人事評価のウエイト配分の仕組みと計算方法の事例についてご紹介します。本記事を参考に、人事評価のウエイトにおける考え方を理解することで、自社の評価指標を明確にし、従業員のモチベーション向上を図りましょう。
目次
人事評価のウエイトとは
人事評価のウエイトとは、評価項目ごとに重要度を示す比重のことです。企業が従業員のパフォーマンスを評価する際に、全ての項目が同じ重要度であるわけではありません。
ウエイト設定の考え方として、総合点を 100点満点と設定し、評価項目が5つあるとします。ウエイトを設定していなければ、各項目の配点は「100点満点÷5項目=20点満点/1項目」となりますが、ウエイトを設定することで、項目ごとの点数を50点満点や10点満点など項目ごとに変化をつけることができます。
例えば、1つの項目を60点満点で、残り40点を残りの4項目で等分したいと思った場合、1つの項目(60点満点)のウエイトを60%に設定し、残り4つの項目は10%のウエイトを設定します。
そして、60点満点項目の場合(各項目ごとの点数は100点とします)の計算式は、以下の用の異なります。
項目1:
60%(ウエイト)×100点=60点 / 60点満点
残りの4項目:10%×50点= 5点 / 10点満点 × 4項目
合計 80点 / 100点満点
このように、ウエイトを設定することで各項目の重要度を定量的に示すことが可能になります。ウエイトは事前に設定し、考課シート等に記載して従業員に公表することで、会社として何を大事にしているのかを共有することができます。
また、ウエイトの設定においては、役職によって割合が異なる場合があります。例えば、業績に対する責任度合いの高い管理職はウエイトが高くなる傾向があります。
具体的な例として、今回は管理職層と非管理職層に分けたうえで、それぞれのウエイトの合計を100%として設定した場合を挙げます。通常は、階層によってウエイトを変えたり目的によってウエイトを変えたりするため、100%を配分するようにした方が良いとされています。
ウエイト設定の例
項目 | 管理者層 | 非管理者層 |
業績項目 | 60% | 40% |
成果項目 | 20% | 30% |
能力項目 | 10% | 10% |
得意項目 | 10% | 20% |
上記の通り、項目別にウエイトを設定することができます。評価項目にウエイトを設定することで、各階層の従業員が会社にとって何を重視するれば良いかを示す指標となり、会社に必要な人材の育成にも活用できます。
加えて、各項目は評価項目内でもさらに細分化することが可能です。
例として、情意項目に関する評価の場合を挙げます。
得意項目 | 管理者層 | 非管理者層 |
規律性 | 20% | 25% |
責任性 | 30% | 25% |
協調性 | 30% | 25% |
積極性 | 20% | 25% |
このように、役職によってウエイトの割合が異なることに加え、評価項目内でもさらに項目が細分化されます。これらのウエイトをもとに、人事評価の計算を行います。
評価項目の具体的な説明については、下記に記載させていただきます。人事評価にあたって、人事考課表の評価項目は会社によって異なりますが、一般的には以下の通りに構成されています。
- 業績項目
- 数値で表せる項目であり、仕事の結果によって評価する。このウエイトを非常に高くすると、プロセスを鑑みない結果主義な評価になってしまう。通常は、管理職はウエイトを高くし、初級職はウエイトトを低く設定する。
- 成果項目
- 数値で表せないが、業績に直結する重要な役割や仕事を評価する。継続的に成果を上げるために非常に重要な項目である。スタッフ部門や初級職はこの部分のウエイトを高くするのが良い。
- 能力項目
- 実績を残すために必要な能力、知識、資格などで評価する。仕事に活かされることで意味を成すものであり、ウエイトを非常に大きくすると、仕事<勉強という誤解を招くおそれがあるため、低くウエイトを設定するのが良い。
- 情意項目
- 仕事に対する姿勢を評価する。職場の風土に影響を与えるものであり、共同作業などの場合は、特に必要とされる項目である。
ウエイトの計算方法の具体例
実際に、ウエイトの計算方法の具体例をご紹介します。
前提として、今回は評価段階を5段階の5点満点として、評価項目ごとの点数を下記のように設定します。
評価点数 | 内容 |
5点 | 期待を大きく上回った |
4点 | 期待を上回った |
3点 | 期待通り |
2点 | 期待を下回った |
1点 | 期待を大きく下回った |
評価段階は、評価項目の実行度合いに基づいて決定します。しかし、明確な目標設定に基づいて評価するわけではないため、評価が曖昧になりがちです。そのため、具体的な行動の表出レベルや頻度を評価基準とすることが重要です。5段階で評価する方法は、運用がしやすくおすすめです。
今回の場合、評価項目ごとの「期待」を標準として、評価することになります。どこに “期待値” があるかがポイントとなり、評価者の判断が分かれるところです。そのため、“期待値” をすり合わせるために、評価者研修や評価調整会議などを実施することが効果的です。
評価項目ごとのウエイトを計算する場合
上記の点数設定をもとに、評価項目ごとのウエイトを計算する場合、下記のような評価になります。なお、今回は【人事評価のウエイトとは】にてご紹介したウエイト設定の例を用いて計算します。また、評価点数は評価とウエイトを掛け合わせて決定するものとします。
管理者層 | 非管理者層 | |||||
項目 | ウエイト | 評価 | 評価点数 | ウエイト | 評価 | 評価点数 |
業績項目 | 0.6 | 3 | 1.8 | 0.4 | 4 | 1.6 |
成果項目 | 0.2 | 4 | 0.8 | 0.3 | 2 | 0.6 |
能力項目 | 0.1 | 2 | 0.2 | 0.1 | 3 | 0.3 |
得意項目 | 0.1 | 5 | 0.5 | 0.2 | 4 | 0.8 |
評価項目ごとのウエイトを計算することで、管理職層・非管理職層それぞれの総合的な評価点数を示すことができます。
評価項目内の項目にもウエイトがある場合
続いて、評価項目内の項目がさらに細分化されている場合の計算方法の具体例をご紹介します。
なお、今回は【人事評価のウエイトとは】にてご紹介した、情意項目に関する評価の場合を用いることとします。また、情意項目の評価点数は、上記の点数(管理職層:0.5, 非管理職層:0.8)を引き継ぎ、それとウエイトを掛け合わせて評価点数を決定します。
管理者層 | 非管理者層 | |||
項目 | ウエイト | 評価点数 | ウエイト | 評価点数 |
規律性 | 0.6 | 0.1 | 0.25 | 0.2 |
責任性 | 0.2 | 0.15 | 0.25 | 0.2 |
協調性 | 0.1 | 0.15 | 0.25 | 0.2 |
積極性 | 0.1 | 0.1 | 0.25 | 0.2 |
評価項目内の項目がさらに細分化されている場合でも、各項目の評価点数を示すことができます。
評価項目にウエイトを設定するメリット
評価項目にウエイトを設定するメリットとしては何が考えられるのでしょうか。
今回は、2点のメリットを説明します。
会社の人材のあるべき姿を示すことができる
評価項目にウエイトを設定するメリットの1点目は、「会社の人材のあるべき姿を示すことができる」からです。
評価のウエイトをどのように設定するか、どの評価項目を重視するかについては、一律であってはならず、等級や処遇によって変えるべきだと言えます。これは、管理職の社員と非管理職の社員、それぞれにどのような人材であってほしいかという会社の思想を示すものです。
管理職の社員には、組織全体の成果評価に重きを置いたウエイト割合にするべきです。これは、彼らが自分の行動だけでなく、部下などの人材育成を含めた全体に対する責任を持つべきだというメッセージを伝えるものです。
一方で、非管理職の社員には行動評価のウエイトを高く設定し、特に低位の等級ほどその割合を増やすことで、「我が社の社員としてふさわしい行動を確実に身につけてほしい」というメッセージを伝えることができます。
評価項目にウエイトを設定することは、会社が社員にどうなって欲しいかという理念、つまり会社の人材のあるべき姿を示すメッセージでもあるのです。
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会社にとって重要な目標を従業員に示すことができる
評価項目にウエイトを設定するメリットの2点目は、「会社にとって重要な目標を従業員に示すことができる」からです。
評価項目のウエイトは、会社の戦略目標やその目標の重要度を反映するものです。従業員が企業の目標に共感し、それに向かって取り組む意識を持つことで、社内全体のパフォーマンス向上や継続的な成長につながります。さらに、評価項目のウエイトが決まっていることで、本人の評価に根拠が生まれ、従業員の満足度も高まります。
例えば、商品別の売上に対する業績評価において、A商品【売上:500万円, ウエイト:50%】・B商品【売上:500万円, ウエイト:30%】・C商品【売上:500万円, ウエイト:20%】とウエイトが設定されているとします。
この場合、売上の数値はすべて500万円のため、一見優先度が分かりづらく思えますが、ウエイトの設定数値に差があるため、会社としてはA商品を優先したい考えであることが伝わります。
目標ごとにウエイトを設定することで一見優先順位が分かりずらい目標であっても、会社にとっての優先度を従業員に示すことが可能になります。
これにより、従業員の目標の優先度が明確になることで、従業員が何に注力するべきかがわかり、会社として達成してほしい目標に取り組むことができるようになります。そのため、会社の方針と従業員の目標に対する方針が一致し、会社が期待する目標達成の成果を引き出すことにも人事評価のウエイトは活用できます。
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まとめ
この記事では、人事評価のウエイトの計算方法を具体例を用いて解説してきました。
人事評価のウエイトの設定は、企業の評価制度の透明性と公平性を高める重要な手段です。ウエイトを適切に設定することで、企業の戦略目標と従業員のパフォーマンスを一致させることができます。
具体的な計算方法を用いることで、評価の際にどの項目がどれだけ重視されるかを明確にすることができ、従業員のモチベーション向上を実現できます。評価項目にウエイトを設定することで、企業全体の目標達成に向けた一体感を醸成し、組織のパフォーマンスを最大化することができるでしょう。
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