360度評価とは?目的・メリット・デメリット・問題点【テンプレート・サンプル例】

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360度評価とは?目的・メリット・デメリット・問題点【テンプレート・サンプル例】

360度評価とは

360度評価とは、一人に対してさまざまな階層の社員からフィードバックを行い評価基準とする人事制度の1つです。

360度評価には、直属の部下からのフィードバックもあれば、同僚からのフィードバック、マネージャーからのフィードバックも含まれます。

また、一般的に、360度評価は匿名によって行われ、本人と役割やチームが近しい場合もあれば、遠いケースもあります。

360度評価の注目の背景

360度評価はどうして注目されるようになったのでしょうか。

本パートでは、360度評価が注目されるようになった背景を3つに分けて解説します。

人材育成の必要性向上

1つめは、成果主義への移行によって人材育成がより重要になったという点です。

企業が競争力を求められるようになり、それに伴い年功序列型や終身雇用制の限界が問題となっています。

そのため、企業がジョブ型などの成果主義的な人事制度への移行をはじめ、社員個人の能力の向上が求められています。

これにより、より客観的で公平性のある人事評価制度である360度評価に注目が集まっているのです。

評価基準の多様化

2つめは、働き方の多様化に準じて評価基準が多様化したことにより、評価が難しくなってしまった点です。

フレックスタイム制や新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに急速にテレワークの普及が進みました。

これにより対面のコミュニケーションが減少し、上司の部下に対する直接の評価が難しくなってしまいました。

それと同時に、対面でのコミュニケーション不足を補うための多様な評価基準の必要性から、以前と比べ納得感を与える評価が難しくなったのです。

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ITやAIによる意思決定の迅速化

3つめは、ITやAIの普及により、より速い意思決定が求められているという点です。

ITやAIの普及により、以前より業務のスピードが速くなり、かつ外部環境が目まぐるしく変わる現代において、主体的に組織を変化させる自律型の組織が求められるようになりました。

そのため、環境の変化に対する評価の適正度が高い360度評価に注目が集まっているのです。

360度評価のメリット・目的

360度評価は、パフォーマンス・マネジメントの手法として多くのメリットがあります。

  • より効果的なフィードバックが出来る
  • 信頼性の高い成長課題を特定できる
  • 組織の課題を明らかにする
  • マネージャーの成長を促す
  • 評価の正確さが高まる

本パートでは、360度評価に関する上記のメリットについて解説します。

効果的なフィードバックが出来る

古典的な人事評価においては、基本的に1人の上司からフィードバックを得ることになります。

ですが、360度評価においては、自身のパフォーマンスや成果に対して、同僚や直属の部下など複数の階層からフィードバックを得る事になるでしょう。

つまり、360度評価によって、従業員は幅広い観点からフィードバックを受けられ、より多面的に評価されるようになる傾向があります。

なぜなら、多くの場合、上司は特定の状況下での成果に着目しがちであるためです。

特に、フィードバックが得意ではないマネージャーを持つ従業員は、360度評価によって、より建設的なフィードバックを得ることが出来るようになる事は間違いありません。

Co:TEAM(コチーム)では、従業員の業務の進捗浄行や結果に対して、部署を超えてフィードバックを送ることができます。そのため、従業員は多方面から評価され、業務の改善や成長につなげることができるでしょう。

信頼性の高い成長課題を特定できる

360度評価とフィードバックは、従業員が自身の成長課題を特定するための強力なツールです。

例えば、360度評価において、直属の上司や同僚から、会議のファシリテーションスキルを向上させる必要性についてのフィードバックを得た場合、それが成長課題である事は間違いないでしょう。

フィードバックを受けた従業員は、上司(マネージャー)との相談を通じて、目標設定とそれを達成するための行動計画を作成することになります。

上司による評価のみの場合は、成長課題の特定に至らない可能性も十分にあるでしょう。

また、フィードバックを受けた内容が必ずしも解決しなければならない成長課題であるとは限りません。

なぜなら、上司による評価の場合、フィードバックの母数は「1」であり、その蓋然性に疑問が持たれるからです。

ですが、複数の従業員から、同様の内容のフィードバックを受けた場合は、その蓋然性は劇的に高まるでしょう。

組織の課題を明らかにする

360度評価は、個人だけでなく、組織の課題も明らかにします

例えば、複数の360度評価において、従業員のモチベーションが低下していることが明らかになった場合、それは個人の問題ではなく、組織の問題である捉えた方が良いでしょう。

この場合、マネージャーは、360度評価の結果を参考に、チーム全体のモチベーションを高める計画を立てることになります。

マネージャーの成長を促す

360度評価は、管理者(マネージャー)にとっても非常に有用な制度です。

部下が上司にフィードバックをできる機会を提供する事で、チームマネジメントについての説明責任を負うとともに、より適切なマネジメントに必要な課題が明らかになります。

また、360度評価によって、他の部門からフィードバックを受ける事で、部下がどの様な成果や貢献を組織にもたらされているかについて正確に理解ができます。

結果として、従業員のパフォーマンスをより多面的に評価が出来るようになり、評価結果に対する部下の納得度や腹落ち感は大きく高まるでしょう。

評価の正確さが高まる

従来の人事評価プロセスにおいて、その正確さに疑問を持った経験は誰しもあるのではないでしょうか。

360度評価は、一般的に匿名によって行われるため、より自由で率直なフィードバックが行われる傾向にあります。

そのため、被評価者にとって、360度評価の内容は、より信頼できるものと従業員は捉えることなります。


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360度評価のデメリット・問題点

一方で、360度評価には、デメリットもあります。

したがって、デメリットを十分よく理解した上で、360度評価を機能させるための工夫・改善を行う必要があるでしょう。

  • 選択した評価者によって偏りが発生する
  • 評価プロセスが複雑になる

本パートでは、360度評価における上記2つのデメリットについて解説します。

選択した評価者によって偏りが発生する

360度評価も、他の人事評価やフィードバック方法と同様に、適切に管理されていない場合、有効なフィードバックが出来なくなる可能性があります。

具体的には、従業員が評価者の選択肢を極端に狭めてしまう場合は、結果が妥当でないものになる可能性が高まります。

例えば、自身と懇親があり、肯定的である相手を評価者だけを選んでしまった場合は、耳に痛いが建設的なフィードバックを得る機会を逸してしまう可能性があるでしょう。

逆に、過去に業務上において何らかのトラブルを起こしてしまった同僚を選んだ場合は、ネガティブな評価に偏る可能性があります。

評価プロセスが複雑になる

360度評価は、有効であることは間違いないものの、実行に多大な労力が必要になります

また、複数の階層やチームメンバーからフィードバックを集める事になりますが、フィードバックを行う人が多ければ多いほど、フィードバックした内容が実行されず、落胆する可能性もあります。

当然ですが、評価者は、360度評価を行うために、多くの時間を投資する必要があるため、それに見合った行動が行われなければ、不満を感じるリスクがあるのです。

360度評価は、運用が難しいと心得ておくことが重要ですが、評価のトラッキング・キャリブレーション・フィードバックをツールの利用により効率化・省力化を図ることが可能です。

360度評価の失敗例・パターン

360度評価は、多面評価により、評価の納得感を高めるとともに、上司が認識出来ていない部下の活躍やパフォーマンスを評価できます。

一方で、導入する上では、組織及びフィードバックを受ける個人の成熟が求められる運用には「大人さ」が必要な制度でもあります。

本パートでは、360度評価のフィードバックにおけるよくある失敗例・パターンと対策を紹介します。

なお、下記の失敗例は、被評価者に対して評価者が誰がであるかは非公開である事を前提としたものである点について留意ください。

フィードバック内容を本人が受け入れる事が出来ない

360度評価においては、ネガティブな評価を部下や同僚から受ける事になる可能性があります。

管理職が部下からフィードバックを受けるケースを例に上げると、360度評価において否定的なコメントを受けるという事は自身のマネジメント能力を評価しないという事になります。

通常の評価制度においては、管理職は、その上司(上級管理職)からのみ評価されるため、「成果」にフォーカスされがちですが、360度評価においては、ピープルマネジメントの質まで問われる事となります。

この様なケースにおいて、管理職が評価内容を受け入れる事が出来ず、部下の「視座」「意識」の低さに還元してしまう可能性があります。

また、真摯な管理職であれば、評価内容に敏感になり過ぎて、部下とのコミュニケーションに異常をきたしてしまうリスクも考慮する必要があります。

そのため、360度評価を実施する際には、管理職がフィードバックの内容を適切に受け入れられるように、人事主体で研修や勉強会を開いたり、上級管理職の1on1で、フィードバックを健全に消化出来るようなサポートを欠かさない事が重要です。

フィードバックに対して改善がなされず制度が形骸化してしまう

前述の内容と繋がりますが、360度評価においてネガティブなフィードバックを受け取るためには、精神的な習熟さや適切な認知の仕方を身につける必要があります。

360度評価におけるよくある失敗例としては、評価は行われるものの、被評価者に行動や意識の改善が全く見られず、評価者が真剣に回答するモチベーションが削がれてしまうパターンが見られます。

360度評価の形骸化を防止するためにも、フィードバックの内容の取り扱い方の啓蒙や、具体的な行動改善に繋げるための1on1ミーティングの設定や目標設定の機会を設ける事が重要です。

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3. 個人攻撃など非道徳的な評価が横行する

被評価者の受け取り方だけでなく、評価者側の評価リテラシーについても一定の成熟が求められるのが360度評価の特徴です。

特に、評価者を匿名とした場合に、一定数の心無いフィードバックが行われるリスクがある事は念頭に置く必要があるでしょう。

パフォーマンスやコミュニケーションなど、業務に関連する内容であればまだマシな方であり、事実無根の内容や差別的なコメントが投稿された場合の対応方針については、事前に設計しておく必要があるでしょう。

一方で、安易に犯人探しをする事は、360度評価そのもののの前提である「匿名」という心理的安全性を損なう可能性がある点に留意してください。

まずは、360度評価の導入時にガイドラインを設け、「人種、信条、性別、社会的身分​又は門地」等による事実無根の個人攻撃については忌避すべき点を明示する事が重要です。

360度評価の導入手順

360度評価を実際に運用する上でのメリット・デメリット・失敗例は以上の通りですが、実際に導入するにあたってはどのようなプロセスを経るべきなのでしょうか。

本パートでは、360度評価の導入方法を6つに分けて紹介していきます。

1. 360度評価の目的と方針を定める

1つめのステップは、目的と方針の決定です。

360度評価の導入において最初に決めなくてはならないのは、この導入が何をメインの目的とするかです。

前述のように360度評価には多様な目的やメリットがありますが、評価の透明性を確保したいのか、風通しの良い組織を作りたいのかなど目的をはっきりさせなくては運用の方針にブレが生じてしまいます。

また、その目的に基づき、おおまかな導入の方針を定めることが必要です。方針を決定することにより、従業員への周知の内容もクリアとなり、のちの運用が円滑になるでしょう。

2. 想定される弊害と運用ルールを決定する

2つめのステップは、弊害の想定とそれを最小化する運用ルールの決定です。

どのような制度にもデメリットや悪影響はありますが、それらを最小化することが重要です。前述のようなデメリット・問題点にどのような対策を講じるか、それを運用ルールとして文書化しましょう。

それらによって、より適切な評価の実現だけでなく、管理職の負担軽減も期待できます。

3. 評価方法を決定する

3つめのステップは、評価方法の決定です。

具体的にどこまでの範囲を評価者とし、紙やWebといったどのような手続きによって評価を行うかを定めます。

ここにおいてツールを用いることも有効です。ツールを全社的に導入することで、評価方法が部署によってオリジナリティを持つ余白がなくなり、社員の異動におけるコスト余剰を防ぐことができます。

4. 評価項目を決定する

4つめのステップは、評価項目の決定です。

具体的にどのような項目によって評価を行うかを定めます。

この評価項目によって360度評価の質は決まってしまうため、慎重な検討が重要です。

項目における設問文はなるべく客観的に回答できるような文体が望ましいとされます。

評価項目の作り方については次の項目で詳しく解説します。

5. 周知・説明を行う

5つめのステップは、従業員への周知・説明です。

360度評価の評価自体の詳細が定まったら、従業員への周知や適切な運用のための説明を行います。

目的や運用方針など、従業員の正しい理解がスムーズかつ適切な運用のための重要な因子となります。 説明会を行うなど、十分な準備が必要です。

6. トライアル・本運用を行う

6つめのステップは、トライアルと本運用です。

従業員への周知が完了したら、一部の部署にトライアル運用を行い、その後本運用を行います。

トライアルを行った後、新たにでてきた運用上の課題を解決し、対策を打ったうえで本運用に移ることで、従業員の不満や戸惑いを防ぐことができます。

360度評価の評価項目の作り方

360度評価を使用して従業員のパフォーマンスを評価する場合は、すべての従業員に適用される普遍的な質問を用いて、従業員を正確に評価し、成果・能力・スキルを比較する必要があります。

一方で、純粋に従業員の育成のために360度評価を使用している場合は、自由回答形式の質問設定が有効です。

このような場合に評価項目を設定する際は、パフォーマンスを全体から把握できるように多様な質問項目を設定しましょう。

これによって、被評価者側も、以前は気づかなかった新しい成長の機会を見つけることができるでしょう。


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360度評価の評価項目テンプレート・サンプル例

評価項目を作る上で具体的にどのような質問例があるのかわからない方も多いでしょう。

ここでは、評価項目の例を「選択式」、「自由回答式」の2つの場合に分けてご紹介します。

選択式の360度評価の場合

360度評価により定量的なデータを収集するには、選択式の質問項目が最適です。

  • 全くそう思わない
  • そう思わない
  • どちらとも言えない
  • そう思う
  • 非常にそう思う

上記の選択肢を使用して、以下の設定項目を回答してもらいましょう。

【360度評価に使える10の選択式の評価項目】
01. 仕事に対して、常に優先順位を付け、期限を守っている
02. 自分や他の同僚と明確かつ効果的にコミュニケーションを取っている。
03. 強力なリーダーシップスキルを発揮している。
04. 高いコミュニケーションスキルを持っており、誰もがチームに歓迎されていると感じるのに役立っている。
05. 常にタイムリーで効率的なフィードバックを提供している。
06. 何よりもチームワークを優先している。
07. 常に精力的に解決策を見つけ、また問題解決のために率先して行動している。
08. 常に否定的・肯定的なフィードバックの両方に対してオープンである。
09. 自社の価値観を強く体現している。
10. たとえ自分とは異なっていても、多様な視点を大切にしている。

自由回答式の360度評価の場合

定性的な情報を引き出すためには、社員の長所と改善点に関する質問を多く含めることが重要です。

自由回答式の設問は、360度評価が肯定・否定的なフィードバックの両方のバランスを保証し、従業員が結果をより受け入れやすくなるのにも役立ちます。

【360度評価に使える10の自由回答式の評価項目】
01. 被評価者の強みは何だと思いますか?
02. 被評価者が今やるべきことを1つあげてください。
03. 被評価者が続けなければならないことを1つあげてください。
04.被評価者がやめるべきことを1つあげてください。
05.被評価者は時間と仕事量をどのくらいうまく管理できていますか?
06.被評価者が自社に貢献したことの例を教えてください。
07. 被評価者を表現する単語を3~4つ考えてください。
08. あなたが被評価者だったとしたら、最初にとる行動は何でしょうか?
09. 被評価者は仕事に対してどれくらい臨機応変に対応できていますか?
10. 被評価者に改善してもらいたい事はなんですか?

まとめ

以上のように、本記事では360度評価の注目の背景・メリット・デメリット・失敗例・導入方法などについて解説しました。

評価の適正化は、従業員エンゲージメントの向上、それによる離職の防止に非常に有効です。

ツールの導入も含め、360度評価の導入や適切な360度評価のための改善を検討してみてはいかがでしょうか。

パフォーマンス・プラットフォームCo:TEAM(コチーム)を活用することで、360度評価の適正化と生産性の向上を両立させることができます。