企業の人材育成における課題・問題点とは?意味・解決に向けた方法・制度・注意点

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企業の人材育成における課題・問題点とは?意味・解決に向けた方法・制度・注意点

現代社会において、人材育成は企業の成長のために必要不可欠なものとして取り上げられています。

しかし、その中には課題があるのもまた事実です。一般的にはどのような課題があり、またそれらに対してどのような解決手法をとればよいのでしょうか。

本記事では、人材育成における課題と、その解決のための制度・方法について解説します。

人材育成とは

人材育成とは、「社員の仕事を行う能力を向上させることにより、会社の経営戦略の実現に貢献できる人材に育てること」と定義されます。

2020年のHR総研による調査によれば、人事が選ぶ最重要課題の中に、人材育成に関わる項目が多数挙げられており(全項目合計で約50%)、人事領域において非常に関心度の高い分野でもあります。

人材育成の意味・目的

人材育成の課題と解決策を見る前に、そもそも人材育成の意味・目的とは何なのか把握することが重要です。ここでは、まず人材育成の意味や目的について解説しています。

基本スキルの定着

基本スキルを定着させることで、社員をその企業で一人前の働きができるようにさせることが第一の目的です。

特に、日本で一般的である一括のポテンシャル採用では、企業の戦力に加えるために最も優先されるべき事項であるといえるでしょう。

専門性の向上

個人の専門性やスキルを高めることで、企業の業績に直接的に貢献できるようにすることも人材育成の目的の一つです。

専門性を向上させた先に、将来の幹部、リーダー候補を育成しうるということもいえます。

離職を抑える

人材育成は能力・スキルの向上だけでなく、社員のモチベーションの維持、向上やエンゲージメント向上にも役立ちます。

せっかく採用した社員が離職してしまっては企業の生産性は上がりません。
離職の抑制のためにも適切な人材育成は重要な要素といえるでしょう。


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企業において人材育成が重要とされる背景

現代の企業において人材育成は非常に重要とされています。

では、重要とされるに至るにはどのような背景があるのでしょうか。

ITの普及による職種の多様化・専門深化

ITの普及により、あらゆる業務が効率化されました。

また、業務の効率化からこれまでになかった職種が出現し、かつそれらの専門性が高まりました。

このような事態の中で企業は競合他社との差別化や、競争力の向上のために、社員一人ひとりの専門性・スキルを高める必要性に迫られています。

しかし、専門性やスキルを備える人材を獲得するキャリア採用ではその人数やスキルに限界があります。

そのため、人材育成が重要とされているのです。

少子化による労働人口減少

現在、少子化により労働人口が減少しています。新卒採用という点でも2014年から売り手市場が続いており、また、2030年には労働人口が1,000万人不足するといわれています。

労働者の数が減少しても企業は売り上げを伸ばさなくてはなりません。そのため、社員一人当たりのできることを増やす、すなわち生産性を高めることが必要になっています。

そのため、社員それぞれの能力を高めるために人材育成が重要とされているのです。

雇用制度の変化

企業の競争性を高める目的のもと、高度経済成長期には当たり前だった年功序列制や終身雇用が破綻しつつあります。

そのうえ、個人にとっては転職がより容易、かつ身近なものになり、社員に「この企業では成長できない」と思わせてしまうと離職されてしまうリスクが高まります。

企業が人材を定着させ、利益を上げるためにも、人材育成は重要とされているのです。

テレワークの浸透

新型コロナウイルスの流行によりリモートワーク、テレワークが推進されました。

またその影響により、社内でのコミュニケーションの絶対量が減少し、組織として人材育成を促進する必要性が認識されたのです。

人材育成の課題・問題点

前述の通り、人材育成についてはその重要性が高まる一方で、実際の取組みや運用においては課題があるケースも少なくありません。

ここでは、実際に起こる人材育成の課題・問題点を4つに分けて紹介します。

他の業務に追われ、時間がとれない

これは、最も身近で、重要性の高い課題でしょう。

上長が日々の業務に追われ、なかなか時間がとれないために人材育成にまで手を回せないというケースです。

とはいえ、上長の時間も有限です。限られた時間の中で業務と人材育成を両立させるにはどのようにすればよいのでしょうか。

人材育成にまでコストをまわすことができない

時間がとれないという一方で、人材育成のための予算を回すことができないという課題も存在します。

企業の成長を優先させて予算を配分すると、どうしても人材育成の優先度が下がってしまい、予算を回すことができません。

しかし、長期的な目線で企業の成長を考えると、次の世代のリーダーを生み出すために、人材育成に対して予算を回すべきです。

短期・中期的な企業の成長をおろそかにせず、人材育成をするにはどのようにすればよいのでしょうか。

企業に人材育成の風土がない

時間やコストが取れないという課題の根本の原因として、企業全体の人材育成に対する優先度が低いことが挙げられるでしょう。

その原因として、従来の評価では人材育成自体にはインセンティブ構造がなく、成果のみに焦点が当てられていたため、上長が人材育成に対して重要性を感じにくかったことが挙げられます。

また、現在の経営者層の多くを占める40~60代の多くは自分がプレイヤーだったときに人材育成の重要性が低く、企業全体の意思決定を行う人々にその重要性が認知されていないことも原因の一つでしょう。

現場や個人に落とし込む前に、企業全体に人材育成の重要性を認知させることが重要です。

上長の育成に対する意識や能力がない

企業に人材育成の風土があっても、取り組む上長に意識や能力がなければその効果は高まりません。

また、せっかく制度を導入しても上長がその重要性を認識しておらず、形骸化してしまったら時間とコストの無駄です。

企業全体としての人材育成に対する意識だけでなく、現場の個人の意識に対しても考える必要があります。

人材育成の課題を解決するための制度・方法

前述した人材育成の課題を解決するために、どのような解決法があるのでしょうか。

本記事では、解決のために導入すべき4つの制度を紹介します。

OJT

OJTとは、On the Job Trainingの略で、実際の仕事を通じて指導をする教育方法のことです。

OJTは新入社員教育で主に用いられ、新入社員1人に対して1人の先輩社員がつく形が一般的です。

実際の業務を行いながら人材育成を行う点、かつ上長が直接人材育成に取り組む点から、時間やコストの課題や、上長の意識・能力不足の課題を解決できるといえます。

OFF-JT

OFF-JTとは、Off the Job Trainingの略で、職場を離れて行われる人材教育のことです。

具体的には、内部・外部の講師による集合研修や、インターネットを用いた学習形態であるeラーニング、社員自らの取り組みを支援する自己啓発などが挙げられます。

上長の日々の業務を圧迫するものではないため、時間がとれないという課題に対しては効果的といえます。

目標管理制度(MBO、OKR、KPI)

目標管理制度は、従来の主観的な日本的な評価制度に比べ、客観的かつ公平に目標を管理してその到達度を測るというものです。

代表的な例としては具体的には上記の3つの手法があり、目標を設定してその達成度を可視化することで着実な人材育成が可能になります。

目標達成度が可視化されることで上長は人材育成を意識せざるをえないため、上長や企業の意識不足という課題に効果的といえます。

1on1

1on1とは、定期的に上司と部下が1対1で話し合うことを言います。

人事の評価面談や目標・成果を確認する面談とは異なり、部下に現状の問題の解決策を考えさせる、まさに「人材育成」を目的とするミーティングです。

上長の業務の時間を削ることになりますが、部下の主体性を育てるという点で高い育成効果があり、かつ上長の意識向上に対しても効果的です。

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人材育成の課題を解決する際の注意点

上に挙げた制度をただ導入・運用するだけでは高い人材育成の効果を得られません。では、具体的にどのような点に注意すればよいのでしょうか。

人材育成の目標を定める

人材育成において、明確な目標を定めていない、あるいは企業が求める人材のスキルや人物像が明確でない場合、効果的に人材育成を行うことができません。

まずはそれぞれの社員が何を目標とするのかを明確にし、そのうえで制度を導入してより早く効果的に目標に近づけるようサポートするべきでしょう。

独自の人材育成方法を作成する

ウェブ上では人材育成の手法として成功した例が多数掲載されていますが、それをそのまま用いるだけでは高い育成効果は得られません。

企業それぞれで業種や規模が異なるため、それぞれの企業に合ったやり方で制度を運用するべきです。

また、長期的に人材育成を考えたときに、独自の育成方法がその企業のノウハウとして蓄積し、その後のよりよい人材育成につながることにもなるため、この点においても独自の人材育成方法の作成は必要といえます。

組織内でのフィードバックを適切に行う

仮に導入した制度の下で新入社員が一定の能力向上があったとしても、上長からのフィードバックがなければモチベーションの低下や育成効果の減少につながってしまうでしょう。

また、フィードバックの間隔があまりに頻繁でも上長の業務を圧迫するだけです。

そのため、月に1回ほどを目安に、適切な間隔でのフィードバックの機会を設けることが重要です。

導入した制度に対するレビューを適切に行う

一度導入した制度が会社にとって適切なものであったかを検討する機会は非常に重要です。

あらゆるものが目まぐるしく変化する現代において、適切な人材育成制度も変化する可能性は十分あります。一度導入した制度もその都度見直し、適切でないと判断した場合には修正を行う必要があります。

具体的には、上司や部下にアンケート調査を行い、半年に1回ほどを目安に見直しをお行うことができれば十分でしょう。

その時々にベストな人材育成を行えるよう柔軟に対応できれば、より人材育成の効果も高まります。

まとめ

本記事では、人材育成の課題とその解決策について取り上げました。

人材育成において絶対的な正解はありませんが、社会や企業の状況に応じて適切な方法でより効果的な人材育成を行うことで、長期的な企業の成長が実現できます。

人材育成に課題を感じているのであれば、本記事で取り上げた制度を一度導入してみてはいかがでしょうか。