成功事例10選から学ぶ人事評価制度〜具体的な手法や導入の際に気をつけるポイントとは?

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成功事例10選から学ぶ人事評価制度〜具体的な手法や導入の際に気をつけるポイントとは?

組織の成果を最大限に引き出し、従業員の成長を促す上で欠かせないのが、効果的な人事評価制度です。

本記事では、選りすぐりの成功事例を通じて、優れた人事評価制度の導入方法や具体的な手法について探求します。

さらに、MBOやOKRなどの具体的な手法を解説するとともに、人事評価制度を導入する際に重要なプロセスやポイントについても詳しくご紹介します。

適切な人事評価制度が組織の発展に与える重要性についても触れますので、ぜひ自社の状況と照らし合わせながらご一読ください。

人事評価制度の成功事例・導入事例10選

人事評価制度の代表的な例としては、以下が挙げられます。

  • MBO(Management By Objectives)
  • OKR(Objectives and Key Results)
  • 360度評価
  • ノーレイティング
  • バリュー評価
  • コンピテンシー評価
  • リアルタイム評価
  • ピアボーナス

本パートでは、上記も含めた様々な評価制度の導入の背景から結果を得るまでの具体的なプロセスと内容について解説します。


評価制度は納得感にあり!
●負担を抑えつつ効果を出す人事評価制度の制度設計・運用方法
●人事専任の社員がいなくても成果につなげられる人事評価の制度設計方法
●被評価者の評価結果への納得、その後の成長を促す人事評価の運用方法
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1. 株式会社メルカリ|OKR・ピアボーナス・バリュー評価

株式会社メルカリはフリーマーケットサービス「メルカリ」を主軸とし、非上場でありながらその評価額は10億ドルを超える国内唯一の「ユニコーン企業」です。

同社では、日本では導入事例がない中、GoogleやIntelが取り入れて大きな成果を出していたことから、OKRを取り入れることを決めました。

具体的には、3カ月サイクルで全体OKRから個人のOKRまで設定・評価を行っています。

個人やチーム、部署のOKRについてはMTGや1on1で適宜進捗確認を行っており、事業部ごとのOKRについては全体会議の冒頭に必ず振り返りをすることで、全社的な運用を続けています。

このOKR運用により、設立10年目というという展開の早いビジネスにおいてもスムーズに目標管理・組織運営ができているのです。

また、株式会社メルカリではピアボーナスも導入しています。

同社にはそれまで社内コミュニケーション施策として「Thanksカード」が存在したのですが、組織が拡大していく中でより深く文化を浸透させる必要性を感じ、ピアボーナスを導入しました。

名称においても、「日常的に口に出せるワード」とするため「mertip(メルチップ)」と名付けました。

導入後は、具体的な活用例の提示や、「mertip賞」の創設といった施策により導入1カ月後には従業員の約9割が5段階評価の満足度で4以上をつけ、さらにチップの消費量も半分以上となり、賞賛文化の浸透に成功しました。

なお、ピアボーナスの浸透に必須のツールについては以下の記事で紹介しています。

さらに、同社では以下の3つの企業理念を掲げて、これらに基づいた行動を行った従業員を評価するバリュー評価を取り入れています。

Go Bold(大胆にやろう)
All for One(全ては成功のために)
Be Professional(プロフェッショナルであれ)

従業員がこれらのバリューに従って行動すると、「Value賞」または「MVP賞」が贈られます。この評価制度は、企業がバリューに基づく行動を高く評価していることを示し、MVV浸透と従業員のモチベーション向上に大きく貢献しているのです。

参考:
OKRのリアルなハナシ 〜(株)メルカリの場合〜 | DIO チームづくりのACTIONが集まるメディア | エンゲージメント解析ツール【wevox】 https://wevox.io/media/mercari-story/ 2019年11月14日

同僚から月60回「成果給」を受け取った人も!メルカリの「ピアボーナス」運用の裏側 | SELECK [セレック] https://seleck.cc/1167 2018年2月21日

2. 株式会社ディー・エヌ・エー|MBO・360度評価

株式会社ディー・エヌ・エーは、「Mobage」などのゲーム事業を主力としつつ、Eコマースやオートモーティブ、ヘルスケアなど幅広くサービスを展開しています。

同社では、MBOの指標を「発揮能力(成長)」に置いており、その達成度を基本給に反映させるという方式をとっています。

成果は外部要因によるものであったり、一時的な伸長であることも多いため、あくまでも当該期間の報酬として反映し、自分でコントロールする部分の大きい成長度合いを基本給に反映するという方針をとっているのです。

従業員がコントロールできる部分を基本給に反映させ、かつ期待する成長度合いをグレードごとに定義づけしているため、従業員にとって納得度の高い評価が実現できています。

なお、目標管理を効率化・効果を最大化させるツール・システムについては以下の記事で紹介しています。

MBOを成長の指標として活用し、基本給に反映することで納得度の高い評価を実現させた株式会社ディー・エヌ・エーは、マネージャーに対して360度評価を導入している企業としても知られています。

メンバー全員の能力を引き出すという考えのもと、そのためには近くにいるマネージャーが部下の伸びしろを引き上げられることが重要と考えたことを導入の背景としています。

コミュニケーションの改善に重点を置いて記名式で360度評価を実施し、実際に改善して周囲からの評価が上がったマネージャーインタビューを社内報に掲載するなどの取り組みを行いました。

その結果が、部下を集めたディスカッションの実施や改善のコミットメントの宣言という効果に表れています。

以上のように、現代の人材確保・人材育成において評価の納得度は非常に重要です。納得度の上昇のために制度改革も有効ですが、そこまでのコストをかけずとも運用を変えることで大きな効果が得られます。

参考:
―DeNAの人事制度に学べ!(前編)― 基本給は「成果」ではなく「成長」で決まる!? | あしたの人事オンライン https://www.ashita-team.com/jinji-online/category3/3415 2018年6月19日上司・人事の承認ナシで異動OK!3ヶ月で20人超が利用した新人事制度・シェイクハンズ | SELECK [セレック] https://seleck.cc/1120 2017年11月28日

3. アドビシステムズ株式会社|ノーレイティング

アドビシステムズ株式会社は、「イラストレーター」や「フォトショップ」で知られるソフトウェア提供を主軸とする会社です。

同社では、ノーレイティングの具体的な制度として「チェックイン」という3か月に一度の目標に向けた成長点や改善点を話し合う場を設けています。

導入以前は全従業員をランキングに当てはめる評価制度を実施していましたが、部下にとって透明性が低くマネージャーにとって負担の大きい制度でした。

そんな中、世界各地に拠点を置く会社の全体にノーレイティングを導入することになり、日本拠点も導入することになったのです。

従業員を巻き込んだプロセスを経て、またチェックインによって正しく評価されている感覚が生まれたことで従業員満足度は30ポイントほど上昇し、従業員のエンゲージメントが高まったことが明らかになりました。

参考:ランク付けの評価からノーレイティングへ  アドビシステムズの人事改革|@人事ONLINE https://at-jinji.jp/blog/20900/ 2018年10月15日

4. カルビー株式会社|ノーレイティング

カルビー株式会社は、「かっぱえびせん」や「じゃがりこ」といった昔ながらの大ヒット商品を持つ老舗菓子メーカーです。

同社では、ジョンソンエンドジョンソンでの社長経験を持つ松本晃氏が会長兼CEOに就任したことを契機に改革が始まり、徹底的な成果主義を掲げることとなりました。

それを受け、「成果主義に定性的な評価は不要なのでは」という考えからノーレイティングの導入に至ったのです。

ノーレイティングの実施においては、1on1での対話内容をイントラネットで公開することで評価の透明性を担保したことで、ノーレイティングの効果とともに全社的に評価の納得性の上昇やマネージャーのスキルアップが結果として表れました。

ノーレイティングの実行に不可欠な1on1ですが、現在の日本では1on1の形骸化や効果実感の低さが問題になっています。

それらを解消し、パフォーマンスの向上をもたらす1on1のツール・アプリについては以下の記事で紹介しています。

参考:
カルビーの“利益率が5年で10倍”を実現させた「働き方改革」とは? | リクナビNEXTジャーナル https://next.rikunabi.com/journal/20170112_c/ 2017年1月12日
【テーマ】1on1 上司と部下のコミュニケ-ション <第2回/全4回> 1on1の事例紹介 ~カルビー株式会社~ – BCウェブマガジン – ビジネスコーチ株式会社 https://www.businesscoach.co.jp/column/hrp19-02.html 2018年6月5日

5. Chatwork株式会社|OKR・バリュー評価

Chatwork株式会社は、ビジネスコミュニケーションツール「チャットワーク」を開発・提供している企業です。従業員数が50~60名を超えた段階で、MBOによる評価が困難になったことから、2017年にOKRの導入を決定しました。

最初はOKRの達成率を基準に評価していましたが、保守的な目標設定の傾向が見られたため、2018年からは「どれだけチャレンジしたか」が評価の重要な要素として追加されました。この変更により、各従業員がよりチャレンジングな目標を設定することに成功したのです。

また、評価は業績評価、行動評価、全社業績の3つの要素から成り立っています。業績評価にはOKRを通じたチャレンジ度の評価が組み込まれ、行動評価では会社のコアバリューを体現できているかが評価の対象です。

Chatwork株式会社の人事制度は、各従業員が自身の目標に向かって挑戦する姿勢を尊重し、会社全体の成長に向けた努力を支援する仕組みとなっています。

参考:
【OKR最前線vol.2】ChatWork流 「完璧を求めない」「カッコつけない 」理想の会社に近づけるためのOKR運用|組織作りベースhttps://www.hito-link.jp/media/interview/okr-chatwork 2018年11月15日

6. 楽天グループ株式会社|コンピテンシー評価

楽天グループ株式会社は「楽天市場」などのECサービスや、「楽天カード」、「楽天銀行」といったフィンテックサービス、さらに昨今では「楽天モバイル」でのモバイル事業参入などITにおける多方面での事業展開を行っている会社です。

同社では、海外進出によって独自の風土を持っていた企業がグループに参入することを契機に、“楽天”という企業体として意識や価値観を統一する必要性に迫られました。

これを背景にタレントマネジメントの考えのもと、コンピテンシー評価が導入されることが決まったのです。

具体的には、「楽天主義」と呼ばれる11項目からなるコンピテンシーを各格付に合うように落とし込み、それらを評価基準の一つとしています。

これにより、現在の全世界的に事業が広がっているフェーズにおいても全社的な意思統一ができているのです。

参考:
評価・研修制度:キャリア採用|楽天グループ株式会社 https://corp.rakuten.co.jp/careers/work/
Vol.2 パフォーマンスとコンピテンシーの2軸による新評価制度を導入し、評価を起点に全社員の成長をサポート | HRプロ https://www.hrpro.co.jp/sp_talemane_v02_2.php

7. スターバックスコーヒージャパン株式会社|ノーレイティング・バリュー評価

スターバックスコーヒージャパンは、アメリカ発祥のコーヒーチェーン「Starbucks(スターバックス)」の日本法人であり、現在は47都道府県に1800以上の店舗があります。

同社は、高品質なコーヒーの提供に加えて、心地よい店舗環境やコミュニティスペースを提供し、顧客に豊かなコーヒー体験を提供することを目指しています。

スターバックスは従業員の評価に点数を用いず、「パフォーマンス・マネジメント・シート」で明確にした個人の目標を、「パフォーマンス&ディベロップメントカンバセーション」という上司との対話で評価します。

この評価制度の基準は以下の3つです。

  • 「結果を出せたか」
  • 「ミッション&バリューズを体現することができたか」
  • 「他の人が成功するのを助けたか」

パフォーマンス&ディベロップメントカンバセーションは、マネージャーと従業員間での目標達成度に対する認識のズレを解消するために導入されました。この面談では、従業員がどのような意図どのような行動を行ったか、そしてそれが目標達成にどう影響したのかについて話し合います。

これによってマネージャーは部下を適切に評価し、従業員自身も会社のミッション・バリューをより自分事として捉えることができるようになるのです。また、マネージャーは従業員への報酬を決定する権限を持ち、それに伴い評価の根拠を評価相手と会社に説明する責任を負います。

この仕組みは点数を用いない評価制度の中で従業員が適切に評価され、組織・個人の成長を促進する一翼を担っています。

参考:
「スターバックスらしさ」を生み出す人事評価制度と世界観のつくり方とは【マーケティングアジェンダ2022レポート第3回】|Agenda note https://agenda-note.com/conference/detail/id=5329&pno=1 2022/11/14
【スターバックスに学ぶ人材育成】従業員が自発的に働く職場の作り方とは|SEMINARS https://seminars.jp/media/650#post-heading10 2023/02/15

8. 株式会社Clolorkrew(旧:株式会社ISAO)|360度評価

株式会社Colorkrew(カラクル)は、ネットワークサービスを中心に提供している会社で、管理職のいない「バリフラットモデル」という先進的な人事制度を導入していることで話題の会社です。

同社は、必要に応じてどのタイミングでも昇級を申し出ることが可能なシステムをとっており、申し出た際の評価方法として360度評価を取り入れています。

被評価者の「コーチ」が昇級を推薦する際に360度評価を取り入れることにより、総合的に被評価者が上位等級にふさわしいかを判断することが可能にしているのです。

また、同社が他の会社と大きく違うのは、従業員が評価者を自ら選ぶことができる点です。この選択の自由が納得感のある評価の重要な要因となっています。最終評価の場には本人も立ち会えるため、自分の意見を述べることも可能となっています。

さらに、評価者と評価の内容をオープンにすることで全員の自己規律が働いている状態を保ち、適切な評価を実現しているのです。

参考:評価者を「自分で」選ぶ。通年リアルタイムで昇降級する「権威を作らない」等級制度 | SELECK [セレック] https://seleck.cc/1226 2018年6月22日
360度評価に偏重する評価制度は機能しないという話|Colorkrew Blog https://blog.colorkrew.com/360-degree-evaluation/ 2020年9月9日

9. 株式会社フィードフォース|リアルタイム評価

株式会社フィードフォースは、One to Oneマーケティングのサポートツールである「social plus」といった、BtoB領域における生産性向上サービスを提供している会社です。

株式会社フィードフォースでは、リアルタイム評価導入以前に以下の3つの人事評価の課題を抱えていました。

  • 成果が出るタイミングと評価のタイミングのズレ
  • 評価基準が明文化されずマネージャーのブラックボックスになってしまう
  • 評価業務へのマネージャーの負担の大きさ

これを受け、評価基準の明確化と併せて、毎月一定の評価基準を超えたメンバーに対して評価を反映させるという取り組みを行いました。

具体的には、1カ月のうちの評価のサイクルを決め、これに従うことによって継続的な短期サイクルの評価を実現しています。

参考:半年に1回の評価制度を毎月の評価制度に変えた話|フィードフォースのnote https://media.feedforce.jp/n/n222a08fd3e2b 2019年11月8日

10. 株式会社Merone|OKR

株式会社Meroneは、女性の自己実現を支援し、自信と愛を育む使命を担う企業です。同社は女性の自己表現を促進するため、在宅物販スクール・託児店舗事業・スクールコミュニティを主力事業として展開しています。

この企業は、各事業の責任者に対して、それぞれの事業に関連するOKR(目標と成果指標)を導入しています。具体的には、最も重要な定性目標(Objectives)を設定し、それらを達成するために必要な3〜5つの具体的な定量目標(Key Results)を明確にします。さらに、これらを中項目や小項目に分解し、3段階の成果指標(KR)でOKRを構築しています。進捗は毎週の全体定例会議で確認されます。

OKRの導入には以下の2つの目的がありました。一つは各メンバーがどのような目標を持っているのかを明確にし、もう一つは各事業の責任者が具体的な数値目標に責任を持つようにすることです。

さらに、OKRと並行して1on1ミーティングも導入されています。これにより、目標達成の定量的な管理が行われる一方で、OKRではカバーできない定性的な側面も補完され、メンバーと経営陣の理解が一致し、メンバーの成長が促進されています。

詳しい導入事例はこちら。

人事評価に使える8つの手法とは?

前パートでは、新しい人事制度の導入に成功した企業10社を紹介しました。

本パートでは、その10社が取り入れていた人事評価手法8つを具体的に説明します。

OKR

OKRとは、目標管理の制度の1つで、Objectives and Key Resultsの略です。これは、企業が設定した大きな目標(Objectives)を各部署や個人が具体的な成果(Key Results)に分解し、達成する手法です。

MBOなどの目標管理との違いは、ムーンショットと呼ばれるチャレンジングな目標を立て、短期間でその達成度やプロセスを評価するという点が挙げられます。

OKRでは全社的に目標が共有され、SMARTの法則に基づいて定量的な目標が設定されます。SMARTの法則は、Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-Basedの頭文字を取ったものであり、目標設定において具体性、計量性、達成可能性、関連性、期限を基準にし、最適な目標を設定する考え方です。

また、OKRでは四半期ごとや月に一度の頻度で進捗を振り返ることが重要です。ただし、OKRの進捗結果だけを人事評価に直結させるということは、短期的で限定的な結果にのみ焦点を当てることになるため、避けたほうが良いでしょう。OKRを他の人事評価手法と組み合わせて個人の総合的な評価を行う企業が一般的です。

MBO

MBOとは、Management by Objectivesの略で、個人またはグループごとに設定した目標の達成度を個人で管理する目標管理制度のことです。

この手法では、個人やチームが自ら目標を設定し、その達成度に基づいて評価が行われます。特筆すべきは、個人の目標が組織全体の目標と密接に関連づけられる点です。

通常、目標設定は上司から部下への指示やノルマの与える形を想像しますが、MBOでは上司と部下がコミュニケーションをとりながら、チームや個人の目標を調和させることが重要です。また、目標の設定は一律ではなく、それぞれの従業員の能力や役割に合致したものであることが強調されます。

一方で、容易に達成可能な目標ばかりを設定すると目標の難易度が一定でなくなり、人事評価の効果が薄れる可能性もあるということに留意する必要もあります。

360度評価

360度評価とは、評価者に関して、従来の上司のみでなく、評価対象者の同僚や部下も含む評価制度のことです。

多面的な評価を行うことで、一視点では生じなかった要素による評価が可能で、評価の納得度が上昇することがこの評価制度のメリットです。

一方で、デメリットとしては、評価の大部分が周囲の人々からのものであるため、主観が評価に影響する可能性が高いことが挙げられます。

それでも、360度評価は多くの企業で採用されており、評価の客観性や公平性を高め、従業員自身も納得感を得やすい制度として重視されています。ただし、人間関係が悪化するリスクを避けるために、匿名での評価や双方が納得できる評価の場を設けるなどの配慮が必要となるでしょう。

ノーレイティング

ノーレイティングとは、人事評価における従業員のランク付け(レイティング)をなくし、数値や記号を用いずに評価する評価手法のことを指します。

業績や評価をランク付けをしない代わりに上司がフィードバックを行い、評価していく形をとり、1on1を通じて部下を評価・育成する形が多いことが特徴です。

ノーレイティングが支持される理由の1つは、「フィードバックと成長」に焦点を当てる文化の重要性です。従業員の成長に対する適切なフィードバックは、パフォーマンス向上に直結します。ノーレイティングは、従業員が建設的なフィードバックを受け取りやすくし、自己評価と成長を促進する環境を提供することにつながるのです。

また、手法では全体的なパフォーマンスやチームの効果を重視するため、個別の制約や偏りを回避できます。ただし、ノーレイティングの効果的な運用には、上司のマネジメント力が必要であり、徐々に制度を整えていくアプローチが推奨されています。

バリュー評価

バリュー評価は、企業が掲げる行動規範や価値観を含める人事評価制度であり、従業員がこれに則った行動ができているかをチェックする方法です。この評価手法は、それぞれの従業員が企業のバリューを理解し、それに基づく行動を考えて実践できるようになることを目的としています。

しかし、企業の理念や価値観に沿った行動という基準は抽象的な場合が多いため、具体的なバリューに沿った行動が何かを明確にすることが重要です。あいまいな評価基準では、個人ごとに評価のばらつきが生じる可能性が高いことを留意しておきましょう。

バリュー評価を効果的に運用するためには、具体的な行動指針を全従業員で共有し、互いにバリューに沿った行動を評価し合う環境を整えることが必要です。この制度を通じて、会社と従業員の方向性を一致させることができるでしょう。

コンピテンシー評価

コンピテンシー評価とは、職務ごとあるいは全社的に定義されたハイパフォーマーの行動特性(コンピテンシー)モデルをもとに行う人事評価手法のことです。

コンピテンシー評価の導入により、業務遂行上のプロセスや不足点が明らかになるため、効率的な人材育成が可能になります。

この制度では、業績を持続的に向上させるための行動やスキル、知識などの特性を明確にし、それを評価軸に据えています。組織全体で共有される明確な評価基準があるため、評価のブレや偏りが生じにくいのが利点です。

ただし、企業の成長段階や市場環境の変化によって、業績向上のための行動特性に変化が生じる可能性があるため、定期的なコンピテンシーの見直しが必要です。部門ごとに優れた行動特性が何かを適宜チェックし、組織全体のパフォーマンスを維持向上させる努力が求められるでしょう。

リアルタイム評価

リアルタイム評価とは、評価対象者のマネージャーや同僚がその働きぶりや成果に対して即座にフィードバックなどの評価を行う手法のことです。従来の1〜2回の年次評価と比べて、記憶の鮮明さやビジネス環境への柔軟な対応が向上することが特徴です。

また、即座に評価を受けられることで、評価への納得感が上がり、離職率の低下などの効果があります。

さらに、高い頻度のフィードバックは課題の発見から改善までのサイクルが短縮し、従業員の成長を促進することにつながるのです。

この制度では、部下にとっては常にサポートを受けられる安心感が生まれ、状況に応じた目標の修正も容易になります。ただし、フィードバックの頻度が増えることで、評価担当者の負担も大きくなることも考えられます。

人事材育成のシステム改革やマネジメントスキルの向上にどれだけ注力できるかが成功の鍵となるでしょう。

ピアボーナス

ピアボーナスとは、peer(仲間)とbonus(報酬)を合わせた言葉で、給与や賞与といった会社から従業員に対しての報酬とは異なり、従業員同士で報酬を与えることができる仕組みや制度のことを指します。

ピアボーナスは、成果や能力ではなく、日々の職場における助け合いや良い行動が対象となることを特徴としています。

この制度には金銭的な恩恵だけでなく、目に見えないが重要な貢献が可視化される利点もあります。目立った成果がない場合でも、ピアボーナスの獲得量が多ければ、上司や部下、同僚に対して自分が貢献していることが示されます。例えば、業務をサポートしたり、働きやすい環境を整えたりするような間接的な成果も評価対象になるのです。

この制度を導入することで、社内の風通しがよくなり、コミュニケーションが活発化し、従業員の定着率向上や新しい才能の獲得にも寄与することが期待されます。ピアボーナスは、従業員同士の相互の感謝と尊重を促進し、職場環境の向上に繋がる有効な制度です。

人事制度の導入プロセス

成果と満足度を両立させる評価制度と運用

Co:TEAM(コチーム)は「日常的に難しく考えず実践できる」「査定要素だけでなく育成要素を含む」という2つのコンセプトを重視しながら人事評価制度に加え、等級・報酬・賞与制度の構築を支援します。

人事評価制度の導入手順は、以下のステップで進めていくことが一般的です。

1. 目的の設定

まず初めに、人事評価制度の導入目的を明確に設定します。企業の理念や目標に基づき、どのような状態を目指すのかを明確にしましょう。

2. 評価基準の策定

評価基準を明確に策定します。具体的な評価項目や基準を設けて、従業員のパフォーマンスを客観的に評価できるようにすることが重要です。

3. 評価項目の作成

そして各従業員に対する評価項目を具体的に作成します。これにより、従業員がどのような成果を達成すべきかを明確にするのです

4. 評価制度の構築

評価制度を具体的に構築し、運用可能な状態にします。評価の際に使用するフォーマットやシステムを整えましょう。

5. 適切な運用環境の整備

評価制度が実際の業務に適用されるための環境を整えます。運用の際に必要なツールやシステムを導入し、効果的な運用ができるようにします。

6. 周知と納得の確保

従業員に対して評価制度の導入を正しく理解し、納得してもらうために、適切な周知活動を行います。人事評価制度の導入の成功は従業員の理解がなければ実現しないことを忘れないでください。

これらの手順を踏みながら、人事評価制度を効果的に導入することが従業員と企業の発展に大きく貢献するでしょう。


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人事評価の導入を成功させるために気を付けるべきポイント

では、新しい人事評価を効果的に浸透させるために、導入の際にはどのようなことに気を付けるべきなのでしょうか?

本パートでは、人事評価導入プロセスのなかで注意すべきポイント3つについて詳しく解説します。

自社の文化にあった評価制度にカスタマイズする

人事評価制度を導入する際、他社の成功事例を参考にすることは良い一歩であると言えるでしょう。しかし、重要なのはただ単に真似るだけではなく、自社の風土や文化に合った制度を選定することです。企業ごとに最適な評価制度は異なるため、他社の成功例が必ずしも自社で成功するとは限りません。

他社の事例を参考にする際は、その制度が自社の文化や従業員に受け入れられるかをよく検討しましょう。一番合う制度を選び、導入する際には定期的な成果のチェックと必要なカスタマイズも忘れず行うことが不可欠なのです。

また、人事評価を効果的に行うためには、適切な人事評価システムや評価シートを活用することも重要です。自社に最適な人事評価制度を構築し、従業員の成長と企業の発展を支援しましょう。

事前に評価者にどのような負担がかかるのか、また解消するための対策を考えておく

新しい人事評価制度を導入するということは時に、評価者の負担が増えることにつながります。したがって、特定の評価手法を取り入れることで評価者にどのような負担がかかるのかを理解し、それに対する対策を考えておくことが非常に重要です。

評価者がどのような負担を感じるかを事前に把握し、それに対するサポートやトレーニングを提供することで、評価プロセスがスムーズに進み、公正な評価が行えるようになるでしょう。

また、評価者が十分に理解し、納得できる評価基準や指針を持つことも重要です。明確な基準があれば、評価者は精神的負担を減らしながらより公正かつ客観的な評価を行うことができます。

さらに、定期的なフィードバックやコミュニケーションの場を提供することで、評価者と被評価者の間での理解が深まり、双方向のコミュニケーションが促進されます。1on1の実施はこのようなコミュニケーションの機会を定期的に設けることにとても効果的でしょう。

総じて、評価者の負担を考慮し、適切なサポートやリソースを提供することで、人事評価制度の導入を成功させることができるのです。

全従業員が新しい評価制度を十分に理解できるような機会を提供する

人事評価制度は従業員のモチベーションや組織の生産性に大きく影響するため、新しい制度について従業員全員が十分に理解・納得できる機会を提供することが非常に重要となります。

説明会を開いたり情報資料を提供したりすることによって、従業員が新しい制度の仕組みや人事制度改革の目的を理解することに重きをおきましょう。

また、制度を変更する具体的なスケジュールを従業員と共有することもこのプロセスでは有効的です。

さらに、一方的に情報を渡すだけでなく、従業員からの質問には丁寧に対応しましょう。従業員が新しい制度に対して疑問を残している・納得できない点が存在する状態を放置することはいい状態とは言えません。

積極的に従業員とコミュニケーションを取り、一つひとつの質問に答えることが彼らの不安を取り除き、納得感のある人事評価制度の構築の実現につながるのです。

適切な人事評価が重要な理由とは?

では、最後になぜ適切な人事評価が企業にとって重要なのかを説明します。

まず、人事評価は従業員のモチベーションに大きく影響を与えます。
適切な人事評価によって従業員がそれぞれの貢献度や成果、努力を妥当に評価されていると感じることができれば、彼らのモチベーション向上につながるでしょう。

反対に、従業員が公平に評価されていない、成果や努力が認められていないと感じると、彼らのモチベーションは低下し、働きがいを感じにくくなることにつながります。不満や不公平感が蓄積すると、チームの雰囲気が悪化し、生産性の低下や離職率の上昇といった問題が生じる可能性もあるのです。

また、組織にとって適切な人事評価を導入することで、効果的なMVV浸透を実現することが可能となるでしょう。MVVの浸透に成功すれば、組織が一丸となって同じ目標を目指すことができ、結果的に生産性の向上や一人ひとりのパフォーマンスの向上につながるのです。

適切な人事評価は企業の成功に直結します。従業員のやる気と働きがいを引き出し、組織全体を高める重要な手段なのです。

まとめ

本記事では、人事評価の成功事例10選とともに、実際の人事評価で使える8つの手法を紹介しました。

事例からもわかるように、同じ人事評価手法でも企業によって細かなルールや導入方法に違いがあります。

各企業が持つ特徴や課題、文化は異なるため、1つの企業で成功した導入方法が他でも必ず成功するとは限りません。そのため、本記事の導入事例は参考に留め、それぞれの組織に合わせてカスタマイズすることが重要です。

また、この記事では人事制度の導入プロセスとその際に注意すべきポイントについても解説しました。

人事評価は従業員のモチベーションやパフォーマンスに大きく影響を与えます。適切な人事評価制度を構築することは組織の成功に大きく寄与するでしょう。しかし、評価制度を変更することにはリスクも伴います。各々の会社に適していない、または計画性のない評価制度の導入は組織の生産性を低下させる可能性があるのです。

自社の文化や課題、特徴を十分に分析し慎重に改革を行いましょう。

コチームLP

株式会社O:(オー)はCo:TEAM(コチーム)という1on1・目標管理を支援する独自のツールとコンサルティングを組み合わせることによって、パフォーマンスマネジメントを実現する会社です。コンサルティングとツールの組み合わせによって、貴社に適した人事評価設計、また評価制度の社内での運用を伴走サポートによって支援します。設計だけでなく運用までの継続的な支援は、新しい制度の定着に大きく貢献するでしょう。

OKRやノーレイティング、360度評価などの新しい人事評価の導入によって従業員のモチベーションやパフォーマンスの向上につなげたいが、どの手法が自社に最も適しているのかわからない、何から始めたらいいか悩んでいるという方はぜひ、こちらのお問い合わせからご相談ください。